第二百六十三話 私、双子にトランプを渡しました。
「リアン、ノアン。
今度はこれで遊んでみて!
遊び方が沢山あるから。
はい、これに私が知ってる遊び方が乗ってるからね。」
「「はい。」」
私が手渡した物?
ふふん、トランプですよ。
だって、チェスや人生ゲームでスキルを得た双子だよ。
トランプだってスキルを得るに違いないからね!
いや〜、あのジ⚪︎ジ⚪︎の外電の中でトランプのスタンドが出てたからね。
あのスタンドのようなスキルが欲しくなっちゃった。
うん、好きなマンガのキャラと同じ事が出来るかもってオタクが知ったら試さない手は無い。
ほら、男の子って一度は主人公の必殺技をマネした事があるんじゃない?
女の子だって、あるんだよ、そういうマネッ子遊び。
え?
私はどんなマネをしたかって?
はい、コスプレ、歌マネ、セリフマネ、色々したよ。
これでも、コスプレで超絶可愛いコスプレイヤーとしてネットを騒がせた時もあったし。
まぁ、その時は顔にゴム製のデスマスクっぽい奴を親に頼んで作ってもらったけどね。
流石の私も素顔をネットに広めるのは躊躇するさ。
乙女の素顔はそんなに安くないもんね。
「あ、魔王に命令ね。
人型じゃない者は【人化】を使って。
みんなで双子と遊んでね。
もちろん、純もだよ。」
言い訳無用、言語道断。
トランプで二人だけでする遊び方って限られちゃうからね。
大勢の方が楽しいし。
【人化】は既に渡しているから大丈夫だしね。
レベル最大にしてるから安心、安心。
「え?
母上、妾はこれから至宝の果物を食したいのですが?」
純はまるで目の前で餌を取り上げられた子犬のようにウルウルと目を潤ませて私を見上げてくる。
く、その技、何処で身に付けたんだ。
可愛いじゃないか。
「御意。」
狼の魔王、ディアトロフは渋く、腹に響く低音で応えた。
そして、どんどん身体が縮んで深緑のタキシードを着た目付きの鋭過ぎるお爺さんが立ってた。
うん、見た目は還暦をとうに過ぎたジェントルマンだね。
まぁ、目付きが鋭過ぎてマフィアのボスっぽいけどね。
「おぉぉあぅぅぅ・・・」
猿の魔王、ヤムキーはまだ泡を吹いて倒れてる。
その周囲に酸っぱい匂いを放つ汚物がチラリと現れていた。
ふん、仕方がないからドリアンの匂いから解放してあげよう。
あと、汚いから【聖浄化】もかけよう。
ゴブリンの魔王、ダニエルは無言で双子に近づいて私が渡したトランプの遊び方の本を借りようとしてた。
うん、文句を言わないって素敵、言いなり最高。
純に対してはこれだけを言えば良い。
「・・・美味しいチーズあげようと思ったんだけどなー。」
ボソっと純に聞こえるか聞こえないかぐらいの小さな声で話してみた。
「是非、妾にお任せを!」
へへ、チョロい。
「それじゃ、まったね〜。」
私はクッキングドールのジャムが作ったマグロのたたきを楽しみにしながらお城に帰った。
あれ?
何かを忘れているような。
なんだっけ?
まぁ、忘れるぐらいならそんだけ優先順位が低いって事で。
うん、食事よりも低いのは確かだね!