第二百九話 私 領地であるマドハドの様子を確認した。
我が領地はあのアクマにあってから生活が変わった。
まず、農民共が農作業をしなくなった。
これだけ聞けば領主である俺の失態へと繋がるだろう。
凶作に陥った。
病が流行った。
重税を課した。
そんな悪評が出るだろう。
だか、実際は違う。
全員が戦士になった。
畑を耕すだけの奴らが剣やら斧やらを持って魔物を狩っていく。
老人やガキだって石を投げたり罠を張ったりして魔物を捕えている。
おかげで周囲の治安は良くなるし魔石やアイテムをガッポリ得られた。
辺境の土地たから魔物の質は高く毎年領民が奴らの餌食になっていたが今は逆の立場だ。
しかも、つい最近まで農民だと思えない強さを誇った。
今では我が兵士と共に戦っている。
しかも、アクマの言う通り、腹は空かない、病気にならない、怪我さえ直ぐに治るときた。
まさに無敵の兵団だ。
さらに俺の領地の防壁の質を高める事になった。
今までは木で壁を作っていたが全て石に変えた。
溢れ出る石材と疲れ知らずの領民がいてこそ出来た暴挙だ。
通常ならば魔物の襲撃に遭い頓挫するがこっちは一人一人が戦士達だ。
魔物が出る度に見張りが斬り捨てていくから造作もない。
その上、俺の領民も増えていった。
クリア団と名乗る一団が俺の領地へとどんどん入ってくるのだ。
しかも、そいつらはアクマと繋がっていると直感で分かった。
そして、見事な働きをしてくれた。
領民共にスキルを教え訓練した。
スキルを持っているだけじゃ使えないからな。
スキルを使った戦闘技術を伝授していた。
また食糧の提供だ。
アクマのおかげで食わずに動けるがそれでも美味い物は食いたい。
その願望を見事に叶えてくれた。
見た事もない珍しくも美味い飯にありつけ、領民共の士気は高まるばかりだ。
また、魔道具を無料で配布した。
この魔道具がまた便利この上無いのだ。
強力な武器、強固な防具、生活を豊かにする雑貨など。
俺の財産が増えるばかりだ!
あとはいつの間にか俺たちはレベルが上がっていた。
俺もレベルが上がり新たなスキルを得る事が出来た。
そして、娘が御先祖様である勇者のユニークスキルを複数得ている事が判明したのだ。
異世界の勇者?
そんな者はもう必要が無い!
我が愛娘、アメリーが邪悪な魔王を滅ぼしてくれよう!
俺の娘が英雄と成るのだ!
カァハハハッ!
しかし、不満が無い訳でも無い。
領民共は俺じゃなく、アクマの指示に従っている。
アクマが連れてきた人形族の指示を聞いているのだ。
アクマが領民共に自害せよと指示すれば喜んで行うだろう。
それ程熱狂的なのだ。
愛娘、アメリーは特にそれが顕著だ。
常に人形族の近くに居座り何か人形族が言えばクリア団から貰った魔道具で領民に知らせる。
最近は身体をアクマに捧げる、とのたまう始末。
そして厄介な事に俺もその熱狂の渦に巻き込まれるだろう。
事実、クリア団が街に入る事を快諾し農民共に戦力が与えられる事も容認した。
今までの俺なら絶対にしなかっただろう事だ。
俺はアクマに何かをされたかもしれん。
しかし、それ自体を不快に思いもしないのだ。
まさにアクマに身を委ねているも同義。
その道が破滅では無い事を祈るぞ。