第百八十七話 私、ナナに会いました。
1兆。
人ってそんなに魔力は無いと思いますよ、リドさん。
私じゃ無かったら一度スキルを使えばそれだけで魔力は空っぽになるよ。
この世界で魔力がゼロになって出る反応は知らないけど魔王時代で魔力がゼロに成れば感情を失ったり異常な執着心が出たりと心への影響が大きかった。
魔力が無限に近い私には関係の無い話だけどね。
影響がないにしてもだよ。
この世界はスキルを使って魔物と戦う物騒な世界。
そんな世界で『負荷』を得たら?
それは死も同然じゃないかな。
だってスキルが一度きりしか使えないんだから。
他の人にそんな荒唐無稽な倍率で魔力を徴収してたらその人、死んじゃうよ。
これは注意しておこうかな。
「リドさん、言っておきますけど人はそんなに魔力を持って無いんですよ。」
「存知。」
それを知ってるのに私に『負荷』を渡した所を怒ればいいのかな?
まぁ、生まれたばかりだから失敗もするかな。
今回だけは大目に見よう。
「他の人に『負荷』を渡さない方が良いですよ。」
「汝、例外。」
あの邪神から魔力が流れてるからね。
私はいくらでも取っても大丈夫だけど。
「そうです。
私だから良かっ・・・え?」
「汝、魔力、無尽蔵。」
なんでリドさんが私の魔力が無限にある事を知ってるのかな。
だって【鑑定】で見ても???表記しかされてないのに。
もしかして私の行動から推測でもした?
いや、魔力の回復が異常に早いって思われてる?
魔力回復が早まるスキルをいくつか持ってるし。
どちらにしろ、丁度良い魔力タンクなんて思われるのは癪だね。
もし、本当にもしも、それで今後も利用してくるつもりなら、私が牙を剥いちゃうかもしれないね。
「汝、試練、合格。
報酬、迷宮、加護、授与。」
「え、報酬ですか?
それは嬉しいですけど。
この迷宮を私にくれるんですか。」
いや、この迷宮は私の魔力で作られてるんじゃん。
言わば私の物じゃん。
リドさんや、それを報酬として渡されるのは私は釈然としないよ。
迷宮をくれるのは嬉しいけどさ。
迷宮の主なんてゲームとかやってて一度はやってみたいって思ってたけどさ!
いや、ここからは真面目な話。
私が好き勝手弄っていいの?
この迷宮を?
広げたり、配下を解き放ったり、罠を作ったり?
何それ、メチャクチャ面白そう!!
やった、よっしゃ、凄い興奮するよ!!
心の顔でニヤニヤが収まらないよ!!!
「汝、歓喜。
我、重畳。」
「ありがとうございます!
リドさん、私はこの迷宮を最高に仕立て上げますよ!」
「汝、我、補助、眷属、従者。」
そうリドさんが言うと何処からか私にそっくりの裸の女の子が現れた。
「・・・はい!?
え、この子が『ドッペルゲンガー』ですか?
と、とりあえず服は着せましょう!
裸は不味いですから!」
私の言葉にドッペルゲンガーは反応をしたのか皮膚が蠢いて私が今、着ているパジャマに変わってた。
へぇ〜、この子ってば賢いね。
私の言葉が分かってるみたい。
「おぉ、細部のデザインまでそっくりですね。
初めまして、私は早乙女 雫です。
貴女の名前は?」
名前を聞く前にこっちから名乗る。
これ、礼儀だね。
「我、眷属、名、無。
汝、命名。」
リドさんが何か言ってる。
わ、けんぞく、な、な?
「なな?
へぇー、ナナちゃんか。
可愛い名前ですね!」
「汝、命名、決定。」
「はい、私はナナです。
よろしくお願いいたします。」
声までそっくりだね!
「名称、ナナ、情報、伝達。
我、帰還。」
そう言ってリドさんが消えた。
後は私とナナだけが迷宮に取り残された。
あれ?
私ってどうやったら外に出られるのかな?