第百八十二話 私、洞窟に転移されました。
なんか暗い所に飛ばされちゃったなぁ。
【夜目】で見えるけど岩の壁と床は無くて剥き出しの土、それから岩肌の天井。
ここって洞窟か何かかな?
静は私の目の前でキョロキョロと見回してるし背中に暖かくて重みの感覚があるから忍も一緒に連れて来られたみたいだね。
『静、お母さんも居るけど見える?』
『ううん、みえない。
どこ?』
「こ、ここは・・・どこでしょうか。
わたかしは先程まで城内に居たはずなのに。
誰か、いらっしゃいますか?」
あ、ヤハルさんの声が聞こえる。
後ろを振り返って見るとヤハルさんが暗闇の中で立ってた。
『静、お母さんが渡した【夜目】って言うスキルを覚えてる?』
『うん。』
『そっか。
そのスキルレベルを上げたら暗くても見えるようになるからね。
今回はお母さんが明るくするからちょっとだけ待っててね。
今度から暗闇の中が静にも見えるように魔力を流し込んでスキルレベルを上げようね。』
『うん、わかった。』
「ヤハルさん、聞こえますか?
私と娘の二人もここに居ますよ。」
「その声は、シズク様?
お怪我はありませんか!」
ヤハルさんが私の声を聞いて周りを見回し始めた。
すぐに私の無事を確認するなんて流石はヤハルさん、出来るメイドさんだね。
「何ともありませんよ。
ヤハルさんも大丈夫ですか?」
ヤハルさんは手で目を覆った。
何かまぶたの上から目を触って確かめてるみたいだけど。
「あぁ、シズク様、ご無事なのですね。
良かったのでございます。
わたくしは、どうやら目が見えなくなってしまったようです。
・・・娘が二人?」
あ、私の娘が増えた事を気にしてるのかな。
残念、結構前から二人目は居るんだよ。
ついでに今は一応、四人です。
静、忍、純、そして傀儡も、私の娘だね。
「ヤハルさん、ここって暗い場所みたいですよ。
今、明かりを点けますから。」
そう言って私は魔力でボーリングの玉ぐらいの大きさの玉を作って魔力で浮かばせた。
これを照明の道具として偽ろうかな。
まだヤハルさんは私がスキルを使えるって知らないからね。
知ったら質問がきそうだしね。
今はのんびりと説明をする場合じゃないだろうからね。
「・・・【夕闇】。」
そして小さな声で【夕闇】を使った。
周りの明るさを変えられるスキルだから便利だね。
すると洞窟の中が明るくなった。
「おぉ、明るくなりました。
その玉は・・・シズク様の世界の魔道具でございましょうか?」
「そうですね。」
魔道具の設定があるからヤハルさんが勝手に判断してくれた。
うん、説明をしなくて良いから楽でいいね。
ヤハルさんは明るくなった洞窟内を見回した。
私はどこからどう見ても洞窟としか分からない。
ヤハルさんは何か分かるかな。
「ヤハルさん、ここがどこか分かりますか?」
「・・・申し訳ございません。
わたくしも分かりかねます。
誰かがわたくし達をここへと転移をさせた事は分かりますが。
目的も分かりかねます。」
そっか。
まぁ、十中八九、メカルーネさん達が関わってると思うんだけどね。
あの時の転移の感覚は神界から現世に帰る時と似た感覚だったからね。
目的は・・・なんだろうね?
洞窟に私達を連れ込む意味って。
うん?
洞窟?
もしかして、もしかすると。
「ヤハルさん、私の推測ですけど良いですか?」
「はい、なんでございましょうか?」
「多分、ここってさっきの地震、大きな揺れと関係のある場所だと思います。」
ゲームだと地震の後に何か新しい所に行けたりするからね。
遺跡とか、地下迷宮とか、ダンジョンとかね。
そう考えるとここは迷宮って思ってた方がいいかな。
そして迷宮って事ならリドさんが絶対に関わってるはずだね。
人への試練として迷宮って言ってた気がするし。
「確かにあの大きな揺れの後にわたくし達がここに転移されました。
何か意味があるのかも知れません。」
「はい。
そして私達以外にもここに転移された方がいるかもしれません。
なのでここを探索してみませんか?」
「はい、確かにここで待っていても何も始まることはないでしょう。
わたくしも探索に協力させていただきます。
しかし、シズク様、気を付けて下さい。
もしや魔王の引いては魔神の罠かもしれません。
それにしても、その方は、シズク様の御息女様でしょうか?」
そう言ってヤハルさんは私が背負っている忍を見ながら聞いてきた。
うん、【コピー】で黒髪にしてるし忍の人種はバレてないよね。
「はい、そうです。
ここから出たら紹介します。」
さて、それじゃあ、迷宮探索をしようかな。
ふふ、なんか勇者っぽくて楽しみになってきたよ。