第百八十一話 私、避難訓練を思い出しました。
なんか避難訓練を思い出すなぁ。
私は寝間着姿のヤハルさんに着いて行きながらそう思った。
静は私の隣を走ってるし忍は私の背中で寝てる。
ちょっとだけ魔力で筋力を上げてる。
忍は私よりも背が低いって言っても結構な身長はあるからね。
起こしても起きなかったから背負うことにしたんだよ。
まぁ、小、中学校までしかやって無かったから久しぶりだね。
地震とか火災とか津波とか不審者とかの訓練しかやった事がない。
あ、不審者は訓練じゃなくて本物だったっけ。
しかも夜中なんて初めてだよ。
耳を澄ましてみればいたる所から複数の足音が聞こえる。
本当に避難訓練みたいだ。
まぁ、この世界には魔物が居るからね。
魔物の襲来とかで避難訓練とかをしてるのか怒鳴り声や叫び声があまり聞こえない。
少しだけ聞こえるけどね。
とりあえず逃げるだけじゃなくて私も《時空間》で確認をしよう。
上空に目線を飛ばしてっと。
城下街には異変無し。
巨大な魔物の姿は見えないね。
建物も崩れてる所はあまりないしね。
多分、スラム街かな?
あそこは元々崩れてるからね。
じゃあ街の外はどうかな?
地面が隆起や陥没してるところは無さそうだけど。
・・・あれ?
あんな街から外れた所に塔があるね。
なんの塔なんだろうね。
見張り塔にしては街から離れてるような気がするし。
うん?
なんか塔じゃ無さそう。
あれは、扉?
え、大き過ぎない?
なんで扉だけあるの?
なにかのオブジェクトなのかな。
私の部屋の窓からは見えない角度にあるから初めて見たよ。
「シズク様、こちらでございます。」
「はい、ヤハルさん。」
そういえばヤハルさん、結構な距離を走ってますけど息切れ一つしてないね。
普通の人だったら息切れしてそうな距離は有ったとおもうんだけどね。
実は体力もあるのかな?
うん?
この道ってあの草原に転移した地下室の道じゃない?
あ、そっか。
あそこに避難して安全な場所に飛ぶって訳だね。
真夜中に転移しても安全な場所って何処だろうね?
外は野生の獣が出てきそうだけど。
それよりもこの世界には普通の獣が居るのかな?
まだ見た事がない気がするよ。
そしてそれは突然起こった。
「え?」
走ってたら視界が歪んだ。
この感覚って・・・転移?
そう思った瞬間に私は別の場所に飛ばされた。