第百七十四話 私、ドーム会場でサステラ達に会いました。
純を乗せた蟲人を先頭に飛ぶ蟲人の軍勢に着いて飛んで行く。
壁に沿って真っ直ぐ上昇して行くんだけど中々付かない。
【飛行】の高さ制限は無いのか結構な高さまで上昇してるんだけどまだ到着地に着かない。
ある程度の高さまで上がると一定間隔を置いて壁に穴が空いてた。
丁度、人が一人通れるぐらいの穴だね。
中を覗いて入ってみるとまるでアイスをスプーンでくり抜いたような妙に丸い空間が広がってた。
床と壁の境目がなくて丸い。
角がないね。
なんか安心する広さだったよ。
広過ぎず、狭過ぎず、ね。
あと、なんか甘い香りがする。
その奥にはまた人が一人通れるぐらいの穴が有った。
おっと、これ以上この空間に居たら蟲人の軍勢を見逃しちゃうね。
まぁ、黒雲のような蟲人の軍勢を見逃しとは思えないけどね。
さて、また飛ぼうかな。
〜 〜 〜 〜 〜
随分と飛んだ。
時間で表すと30分だよ。
感覚で距離を測ると上空8000メートル余り。
もうちょっとでエベレストを超えちゃうぐらいの高さだった。
よく酸素濃度が変わらないなと思ったよ。
まぁ、亜空間を作るときに気圧は考えてなかったからね。
重力は基本作ってるけどね。
気圧の変化なんて無いに等しい世界なんだよ。
空気はあるし重力もあるけど気圧は無いなんて変な世界だね。
世界を作った本人が言っちゃいけないけどね。
「ようこそ、サオトメ様!
待ってました!」
「はい、久方ぶりでありますね。
純から話は聞いております。
ご用件はどのような事でしょうか?」
さて聞いた通り、私の前にはナイスバディなサステラとアイルさんが居る。
そして今はドームと思われる空間に蟲人がぎっしりとひしめいている空間に私は居るんだよ。
東京ドームが複数入るようなドーム状の空間にどこのライブ会場ですかと聞きたくなるような密度。
そりゃ気圧とか重力とかの話で現実逃避したくもなるよね?
私の魔王の時の演説の時よりも密度が高いんだよ。
緊張もするさ。
用事は済ませるけどね。
「サステラ、アイルさん、お久しぶりです。
私は画家を探してるんだよ。
蟲人で絵が上手い人って居ますか?」
「絵画ですか?
芸術はあまり得意ではありません。
ですが写生なら蟲人の皆は出来ます!」
「はい、蟲人は決められた行動なら正確に行う事に長けております。」
決められた行動かぁ。
うん、蟲っぽい特性だね。
写生が得意なら手本さえあれば絵は描けるのかな。
うん?
正確に行う?
「えっと、じゃあ、料理はどうかな?
レシピがあれば作れそう?」
料理はレシピ通りに作れば誰でも美味しく出来るからね!
「料理、ですか?
えーっと、多分、出来ます?」
え?
なんでサステラさん疑問系なの?
あ、元王女だっけ。
そりゃ料理は作らないかな。
「我ら蟲人は料理の文化は無く経験のある者は皆無でしょう。
しかし、一度拝見させてもらえれば行えるかと。」
え、種族柄なの!?
料理を作らないで食べるって・・・自然のままで!?
流石は蟲人、ワイルドだね。
でもアイルさん、やり方さえ分かれば作れるって話し方だけど凄い自信だね。
料理はそう甘くないよ?
まぁ、教えるけど。
「あ、本当!
なら、蟲人の皆に料理を作ってもらいたいんだけど良いかな?」
「はい、サオトメ様の頼みならば!」
「現在、我ら女王種や卵の世話以外に仕事がなく暇のある者も多いので働かせましょう。」
「う〜ん、でもこの数に料理を教えるのは大変そうだけどね。」
全員に教えなくてもいいけどね。
百人ぐらいは料理人を確保したいけどね。
「ではわたしにご教授頂けますか?
その後はわたしが皆に伝えていきましょう。」
あれ、それじゃ動画を渡せば何とかなりそうな予感がする。
魔力で何とかしよう。
「それは助かるね。
それじゃ、はい、これ。」
小型テレビを魔力で作った。
私の知ってる料理動画が録画されてる物だよ。
命名『煮焚の小箱』だね!
「これは、一体なんでしょうか?」
「それに様々な料理の映像を登録してるから後で使い方を教えてあげるよ。
あ、料理の材料はこれから出してね!」
私は材料に困らないように魔力で食材が出る袋も渡した。
これは『食物蔵』だね!
この際だから他にも装飾品とか裁縫とか色々と頼んでみようかな。
あ、後で純ちゃんに【鑑定】を渡して勇者のユニークスキルを探してもらおうかな。