第百六十三話 私、焼き魚を食べました。
焦げ目が軽くついた焼き魚の身を箸で解して口の中に入れる。
噛めば噛むほど魚の旨味が染み出す。
そこに真っ白のお米を一口食べる。
一緒に噛んで味わったら飲み込む。
「あぁ、幸せ。」
「シズク様、これも美味でございます。」
「おかーさん、お魚美味しいね!」
『うん。』
思わず声に出しちゃった。
みんなも反応したけど好評だから気にしない。
今回、食べてる魚はホッケの味醂漬けだよ。
私、味醂が大好きなんだよね。
甘くて美味しいしご飯にもよく合うからね。
ただ、残念なのはこの城には味醂やホッケが置いてなかった事だよ。
異世界だから仕方が無いんだけどさ。
似たような物が有ってもいいのにね。
静と忍も箸で魚の身を解して食べてる。
しかも、忍は気配を消して私の隣で食べてる。
《時空間》でヤハルさんからは見えないようにしてるからね。
いつかは姿を隠さずに一緒に食べたいけど、忍の人種のイメージに難があるからね。
う〜ん、ヤハルさんだけでも配下に加えて洗脳しようかな?
隙があればそうしよう。
ならウォンバットさんもかな。
二人に『技能図鑑』を渡して使えるように登録する為の儀式って事で《魔王の契約》を使えばいいかな。
なら二人が揃ってた方が良いよね。
それにしても二人とも箸の扱いが上手くなってきたから簡単に解す事が出来るんだ。
娘の成長が見れて私は嬉しいよ。
ふ、ふ、ふ、二人とも味醂の味の虜になって欲しいな。
ヤハルさんは魚を食べる事を慣れていないみたいで先に解しておいてあげた。
ヤハルさんも美味しそうに食べてくれてるから嬉しいね。
料理人冥利に尽きるね。
今日はウォンバットさんとコペル君は来てない。
なんでも、国王様からある仕事を任されたみたいだから来れないそうだ。
ふん、残念だね、ウォンバットさん。
食後にレアチーズケーキを出そうかなって思ってたけど今回は止めとこう。
ウォンバットさんはともかくコペル君も一緒に食べたいだろうしね。
何か忘れてるような気もするけど忘れるぐらいならそんなに重要じゃない事だよね。
そのうち思い出すから良いや。
「シズク様、今日の午後から勇者の末裔である大貴族、ラーケン卿の皆様がお見えになるようでございます。
ですので午後はここでお待ちして頂けませんか?」
「はい、分かりました。
此処で待ちます。」
あれ、もう来るの?
近々ってのは聞いてたけど早くない?
・・・まぁ、いっか。
なんか波乱の予感がするね。