第十六話 私、無事に三人抜け出来ました。
あたしはレガリア・ディーバード。
国王様から『紅乙女』の騎士団長を承っている一人の騎士だ。
先日、勇者を鍛える事を国王様から主命を頂いた。
勇者を育てるのか。
確か西の国に勇者が現れたと聞いたな。
勇者は他国に居るのだがあたしが行っても問題はないのだろうか?
それに西の国には獣王が居たはずだ。
是非とも獣王と闘ってみたいものだ。
そうか!!
獣王と闘う為の言い分という事か!!
ならば早速旅の準備を・・・。
うん?
違うのか?
・・・なるほど。
異世界の実力者を召喚するのか。
ううむ、獣王と闘う事が出来ると思ったのだがな。
しかし、異世界の実力者か。
勇者として召喚されるのだ並大抵の者ではないだろう。
楽しみだ。
〜 〜 〜 〜 〜
これが・・・勇者なのか?
見た目は人の娘だな。
腕が4本あるとか、太い尻尾があると思っていたのだが案外世界が変わっても人の姿は変わらないらしい。
しかし強者には見えない。
聞くとレベルが0であるらしい。
レベルが上がるまでスキルも覚えられないのでは鍛えようがない気がするのだがな。
とりあえず連れて行くか。
何故かメイドが勇者を連れて行くのを止めるがこれは国王の主命だ。
勇者として召喚されたのだからこんな見た目でも実力はあるはずだ。
あたしはメイドを無視して勇者を担いで訓練所まで走る。
それにしても軽く細い体だな。
あたしが掴めば折れてしまいそうな手足。
・・・勇者ではなく間違って召喚されたのでないだろうか?
せめて自己紹介はしておこう。
それにしても騒がないな、勇者。
肝が据わっているのかもしれん。
・・・もしかして魔法が得意なのではないだろうか?
聞けば剣を使って魔物を倒した事があるらしい。
素晴らしいな。
この体で魔物を倒せるとは。
よし、ではあの期待の新人達と闘わせてみよう。
異世界の実力者の闘い。
うむ、興奮するな。
〜 〜 〜 〜 〜
ほう、力の強いアーゴと打ち合ったはずなのに剣の軌道をずらしたのか。
その後、体勢を崩したアーゴを投げ飛ばすとはなかなか見事だ。
あの細身で男を投げ飛ばせるとは大したものだ。
次に素早いイグニスは接近して短剣での連撃を勇者に向かってやったが全て躱したのか。
その上で最後の一撃にカウンターを仕込んでくるとはな。
なかなか回避能力は高いな。
最後のウルーベルはスキル持ちだ。
腕から槍の先に掛けて赤い光が宿っていたから【チャージ】を使ったな。
男二人を倒したから奥の手を使う事に躊躇いはないな。
本来ならレベル0の者に向かってスキルを使うのはいけないのだがな。
うん?
あたしはウルーベルに勇者がレベル0なんて伝えていたか?
少し不味いか。
いや大丈夫みたいだな。
勇者がウルーベルが動く前に急接近してこめかみに剣の柄で殴り倒すとは恐れ入った。
しかしレベル0に負けてしまうとは勇者が凄いのか新人共が腑抜けていたのか。
とりあえず新人共には城下町を5周走らせた上であたしと打ち合ってもらおうか。
勇者は疲れてなさそうだからあたしと闘ってみる・・・のは不味いか、新人共より少し強い奴と打ち合ってもらうか。