第百四十七話 私、あの子に攻撃をされました。
「フゥゥウウウウウウウ!!!」
目の前であの子が奇声をあげながら正気を疑うような踊りをしている。
裸で踊ってもこれじゃ、男の人は喜ばないと思う。
エロさよりも恐怖を感じるだろうからね。
悪魔に憑かれた女性が暴れてるようにしか見えないよ。
もう、見た目は本当に私の理想なのに。
私も10年後にこんな美女になってるなら魂を売ってもいいかなって思うぐらいの完成度なんだよ。
「イェへへへへへ!!!」
さて、なんであの子が呼び出されたのかな?
一応、私の中にあの子の存在は感じる。
目の前のあの子も幾分か存在が薄いような気がするけど一緒の存在だね。
う〜ん、配下を洗脳するための分身と一緒なのかな。
「オホッオホッ!」
【スピリット召喚】が原因なのは分かる。
理由があると思うけど何なの?
レベル10にすると神様でも召喚される訳なのかな?
それよりもスピリットって道具の精霊じゃなかったっけ?
私が【マイムパペット】で作った影武者があの子の器として変換でもされちゃったのかな?
「ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!!!」
とりあえずどうにか目の前のあの子を制御しないとね。
意思疎通は・・・無理だね。
理性なんて一欠片も無いから。
とりあえず《魔王の契約》で配下にしよう。
多分、私の配下にはなってないだろうからね。
「その奇妙で狂ったダンスなんか止めてよ、《魔王の契約》。」
私の手から黒いモヤが出て狂い踊るあの子に近付いていく。
「テキ、テキ、テキィイイイイ!!!」
あと少しで当たるところであの子が奇声をあげながら避けた。
それはもう人がそんな風に動けないよと突っ込みたいぐらいの動きで。
こう、できの悪い映像のようなカクカクヌルヌルという擬音語が混ざったような動きだよ。
あれ?
あの子って言葉を話せてたっけ?
歌は歌えるけどさ。
もしかして私の知ってるあの子とは別なのかな?
そう思ってたらあの子の顔が十字に裂けて私の方に向かって走ってきた。
怖い、怖いよ!?
口裂け女もびっくりの裂け具合だよ!?
その上、裂けた口はどんどん大きくなって車一つを余裕で覆えるほどに広がった。
まるでタコかイカみたいな形相だね。
でも私はそれを知ってる。
実際に見るのは初めてだけどもう知ってるんだよ。
《物理の極み》で姿を弄って敵対する者を喰らうあの子の常套手段。
そうそう《物理の極み》は姿も変えられるんだ。
私も出来るけどやりたくはない。
《狂人の宴》の効果で口に入った瞬間に分解されるからね。
魔王時代で私が死んだ時に前に敵が居て《狂人の宴》を持っていればこんな風に襲ってた映像を見てる。
私はあの子の目の前に《魔王の契約》の黒いモヤを出す。
理性のないあの子ならそのまま突っ込んで私の配下になると思ったんだ。
でもあの子は跳躍して避けた。
そして身体から触手のような物を出して後ろに飛んで行った。
あれ、あの子ってそんな知恵が有ったっけ?