第百三十八話 私、人族の勇者を歓迎しました。
わたしの名はリコール・アンダーソン・フレブラーナ。
誇り高き帝国の民であり、精強なる帝国兵であり、そしてこの世界を守護する勇者でもある。
わたしは目標の話を幾つも理解する事ができなかった。
目標の能力は幾つか分かった。
類稀なる情報収集能力。
魔力から物質を生み出す能力。
この二つが初めの方で見せられた目標の片鱗だ。
目標やメイドの口から語られた能力の片鱗に過ぎなかった。
生活文字と魔法文字を覚えた。
的確で高速な計算。
魔力で物を動かす能力。
『竜殺し』に匹敵する戦闘能力。
伝言者テルを唸らせる料理。
魔力でレベルを上げた。
・
・
・
おそらく、目標とメイドの誇張が入っているだろうが嘘はなさそうだ。
目標から異界の話を聞き出せた。
目標の世界の学者は直列世界と並列世界が存在し、その数は無限に近い有限の数がある。
目標の世界は魔王に征服された世界。
この世界と共通点は多く存在するとの証言を得た。
魔物、スキル、ステータスなど。
目標の話を信じるならば世界の間を渡る事は神及びそれに値する者しかできないらしい。
だからその世界の魔王がこの世界に現れはしないだろうと目標は言った。
神か。
目標が召喚されたのは女神メカルーネの力だ。
辻褄は合う。
そして、目標から最後に歓迎と友好の印として武器を渡された。
また帝国の慣しの一つであった。
信頼した者に対して背中を預けるために武器を渡す。
それは帝国の民にとっての最大の信頼表現であった。
このあと、目標と試合もさせてもらえるらしい。
武器の微調整がしたいから闘って欲しいと言われた。
わたしは最初は賛成だった。
目標の戦闘能力も直に見れると思ったからだ。
しかし、それはわたしの勘違いであったのだ。