第百二十六話 私、狼の魔王を見に来ました。
私の目の前には壮大な緑の山がある。
何も知らなかったらそう思うだろうね。今でも本当にこれが生き物なのか疑問だよ。
私の目の前にある山は草原で狼に《魔王の契約》を使った時に《狂人の祟》で一緒に配下に加えた狼の魔王なんだよ。
今はうんともすんとも言わないけどね。
記憶を読んだら昔の勇者に敗北して傷を癒す為に休眠状態になってるみたい。
これだけの大きさの相手に七日七晩、戦い続けて勝つなんてこの世界の勇者も侮れないね。
その戦いの場があの草原で元は渓谷だったみたい。
地形を変える程の激しい戦闘だった訳だね。
ゴブリン達も調べたしついでに私の配下になってこの天空島っぽい所に居る奴も調べようって思ったんだよ。
順番は流れからは二番目に配下にした狼かなって事で決めたよ。
それにしても流石は異世界、地球じゃ考えられない大きさだね。
魔王時代の時でもこんなに大きい奴はそういなかったし。
龍とかベヒモスとか巨人兵とか・・・。
思い出せばゴロゴロ居たよ。
それよりも狼の魔物の種類は5種類の50体だけなんだよ。
理由は魔王が休眠状態に入って魔物を増やせなかったかららしい。
だから自然に魔物が交尾して細々と続いていたみたい。
その絶滅しそうな魔物を配下に加えられた私は幸運だったね。
魔王だけじゃ山にしか見えないから気付かないだろうし。
ヤシの殻のような物を頭に被った大型犬ぐらいの大きさの種子狼が15匹。
緑の体毛の2、3メートルの大きさの草原狼が10匹。
草原狼と同じ大きさで花の香りがして佇まいが上品な花香狼が10匹。
上の二匹よりも小柄な黒や茶の体毛が混じってる土根狼が10匹。
大きさは5メートルもあるけどガリガリに痩せてる枯樹狼が5匹。
うん、異世界風の狼の群れだね。
少し規模は大きいぐらいだね。
ゴブリンとも仲良くやってるみたいだし今の所は狼の魔物に問題は無い。
だけど狼の魔王、こいつに問題がある。
偶に寝返りを打ったり寝呆けて吠えたりする。
もうすぐ休眠状態から目覚めるみたいでその兆候が表れてるみたい。
この巨大な物体が転がってきたり、【死の声】で即死効果のある遠吠えを寝呆けてするからね。
うん、とりあえず他の配下とか別の空間に移してるよ。
死んでも私の魔力や【九死一生】で生き返られるけど死なない方が良いに決まってる。
それに訓練や実験の邪魔だしね。
今はあの子を入れてだいぶ良くなったけど最初は夢を見て足をバタバタ動かしてたからね。
まるっきり犬の行動だけどね。
あの子が上手く躾けてくれる事に期待しておこう。
次は地下水路で配下にした不浄蟲の方に行ってみよっと!