第百ニ十三話 私、焼死しました。
少女は笑っていた。
そう、笑っていたのだ。
その少女の周りには火の海と化して熱気で少々歪んで見えているが少女は確かに笑っていた。
「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ・・・」
少女は火達磨になりながらも声高らかと嗤い続けた。
まるで心地良い風に吹かれるかのように熱気に嬲られていた。
まるで恵の雨に打たれるように炎に炙られていた。
まるで恋焦がれる乙女のように純粋な喜びに満ちた顔で嗤っていた。
着ていた服は既に燃え尽きた。
しかし身体にはおろか髪の一本も燃えていなかった。
その少女の嗤いに歪んだ口からも火の粉が出ている。
どうやら内臓の方にも火の手がまわっているようだ。
しかし、少女の顔に苦しげな様子はない。
本当に純粋な喜び、状況が違えば見た者が見惚れるほどの美しい笑顔。
ただただ、両手を広げその場でクルクルと回りながら嗤う少女。
熱いはずなのに泣き叫ばずに嗤う。
火の中に包まれながらクルクルと回り続け嗤う少女に対して人はどう思うだろうか。
それはとても『狂っている』という言葉が似合う状況だった。
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うわ〜、今回も凄然な様子だね。
魔力の流れを一時的に切って魔力の残存量が無しの状況にしてみたら一瞬にして私は死んだ。
死因は多分、焼死。
魔力を切るまでに放っていた全方位からの【ファイヤアロー】で死んだ。
【ファイヤアロー】って名前だけど衝撃は銃並みだからね。
魔力を一時的に切ったからあんだけの衝撃に耐えられないよ。
でも身体は燃えても火傷の一つもしてないからね。
多分、レパさんの加護の『不変』の効果だと思う。
身体が変わらなくなるって聞いたけど火傷もしないんだね。
だから焼け死んだ訳じゃなくて全方位からの銃撃で死んだって言った方が合ってるかも。
まぁ、この世界風に言うなら【ファイヤアロー】のダメージでやられたって事だね!
いや〜、一瞬だったから私は熱いと感じる前に死んじゃったよ。
そしてあの子が出てきた。
燃える私の身体で笑いながらその場で回るという行動を長い事してた。
周囲の火はすぐに消えたけど私の身体の火はなかなか消えなかった。
火傷はしなくてもしっかり焼けてたって事かな?
燃やしても減らない燃料みたいな感じかな。
火が消えた時には《時空間》で隔離していた空間の酸素が空っぽになった時だったよ。
《時空間》で隔てて無かったら静と忍にあの子の嗤い声を聞かせちゃう所だったよ。
ふー、危なかった。
今は《時空間》で魔力を切った所からの映像を見てた。
気付いたら裸であられもない格好で倒れてるんだもん。
うん、あれは誰かに見られてたらお嫁に行けない格好だったよ。
今はちゃんと服も着てるし恥ずかしかったけど誰にも見られて無かったから大丈夫だからね!
でもそのお陰で新しい狂人シリーズのスキルとパッシブスキルの魔力の通り道が分かった。
魔力の流れを一時的に切ったお陰でパッシブスキルへと流れる魔力を見つける事が出来た。
あとはパッシブスキルを意識してそこに流れている魔力の通り道を塞ぐだけで完了だね。
早速【災厄】や【腐りし手】なんかスキルを無効にしないと!
日常生活にいらなくて危険そうなスキルが多いから急いで片っ端から魔力の通り道を塞がないとね!
さぁ、静と忍が起きる前に終わらせないと!