第百ニ十話 私、地下水路で蟲とエルフを配下にしました。
私はこの音に覚えがある。
クーと初めて会った時にこんな風に叫んでたっけ。
それで静が気絶しちゃったんだったかな。
あの時は夢の中だったけど現実を忠実に現すように設定してたから間違いは無い!
「ローレイさん、この先にエルフが居るみたい!
しかもこの声からするとエルフか同種の植物に何か遭った時の叫びだよ。
ローレイさんは地下水路で植物を燃やしたりしちゃった?」
私も地下水路に植物は無いとは思うけどね。
日が当たらないし、水は汚れてるし。
でも自然ってのは生命力が高いからね。
もしかしたら、この地下水路に植物があるかもしれない。
「いや、オレは地下水路で草は見てねーぞ。
それより、マリア。
なんでお前はエルフの声を聞き分けられるんだよ!?」
配下に牛エルフのクーが居るからね。
「エルフの叫びを聞いた事があるからね。
それよりもこの先に居るエルフが何かに襲われてるかも。
ローレイさん、助けに行こう!」
「おぉ、分かった!」
私とローレイさんはエルフの声と思われる音の方、盗賊のアジトの奥へと進んだ。
その前に私は子供達を《時空間》で亜空間に送った。
ここで目を覚ましたら地下水路に出て迷子になるかもしれないからね。
静と忍の友達候補だから大事にしないとね。
「おいマリア、ガキを牢屋に入れたのか?」
へ?
なんで牢屋?
あ、ローレイさんには悪者を閉じ込める牢屋って説明したからか!
ローレイさん、誤解だよ!
そんな怖い顔で凄まないで。
「いやいや。
説明では牢屋って言ったけど、こことは違う部屋に移しただけだよ。
こんな所で目を覚ましたら子供が怯えちゃうだろうしね!
ここ、暗いし臭いしさ!」
「そうか。
お前の道具でこの辺りは明るいけどな。
まぁ、確かに怯えそうだよな。」
私の必死な返事にローレイさんは納得してくれたよ。
そうそう、この辺りは【夕闇】で明るくしてる。
暗闇で話すなんて悪役っぽいし。
ローレイさんには不思議な道具って事で説明してる。
ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!
エルフの叫びが大きくなってる。
ふとローレイさんの方を見ると無事みたい。
気絶とかしないのかな?
あ、スキルで防いでるのかな。
【奮い立つ獅子】とかね。
でも私が【魔性の叫び】と【歌唱】の合わせ技で気絶以外の状態異常もあったっけ。
「あ?
どうした、マリア。」
私の視線に気付いたローレイさんが何かあるのかと聞いてきた。
「えっと、ローレイさんは大丈夫?
私は精神系の状態異常は効かないから良いけど。
普通ならエルフの叫びで気絶とかするよ?」
「そういや、そうだな。
・・・分かんねぇよ。
あー、でもオレも効いてないみてぇだし大丈夫だろ。」
う〜ん、なんで?
あ、そういえばローレイさんにあの子を入れてる!
だから精神系の状態異常を無効にしてるんだね!
あれ?
行き止まり?
向こうの壁が波打ってる?
「ローレイさん、止まって!
向こうに何か居るよ!」
何、あの黒いのは?
「ぅお!?
本当だ、なんか居るな。
あれは・・・不浄蟲の大軍じゃねぇか?」
「不浄蟲?
何それ?」
「蟲の魔物だぞ。
こいつらは周囲に毒と疫病を振り撒くし一匹居れば百は居るって言われてるからな。
見つけ次第、殺さないといけねぇんだ。」
あー、ゴキブリみたいな奴なんだね。
よく見たら大きさは違うけど姿はゴキブリに似てるような。
「にしてもなんだよ、この数は?
もしかしてこの奥にエルフが居んのかよ。」
毒と疫病を振り撒くって事はそういうスキルを持ってるのかな?
それなら私の獲物だね!
魔力で業物みたいな杖を作って。
「ここは私に任せて!
不浄なる魔物よ、此処より立ち去れ!
・・・【呪い避け】《魔王の契約》《狂人の祟》《時空間》。」
私は格好いいセリフの後にスキルをボソっと呟いた。
【呪い避け】はエルフに対策だね。
この蟲の壁の向こうからも大声で叫ぶような声が聞こえるんだから壁がなくなったらもっとうるさいだろうし。
自分の声で状態異常になれば少しは大人しくなるでしょ。
配下にも加えやすくなるからね!
スキル名はローレイさんには聞こえないように注意しながら言った。
あくまでこれは不思議な道具の能力。
私のスキルではない。
私は業物みたいな杖の先端から黒いモヤを吹き出させて不浄蟲の壁に当てる。
10メートルくらいの距離が有った。
だからか何匹かは抵抗されて駄目だった。
けど一匹を《魔王の契約》で配下にしたのを皮切りに一斉に不浄蟲の壁は消えた。
取り敢えず《時空間》の個別の亜空間に入れておく。
「な、なんだよ。
おい、マリア、もしかしてその杖もか?」
「ふふん、良くぞ聞いてくれました!
これは魔物を絶対に何処かに飛ばせる杖、その名も『魔払の杖』です!」
「お前、本当にヤベェ奴を持ってるな。
それ、国宝をも超えてるんじゃねぇか?
ん?
どっかってどこだよ?」
「さぁ?
世界の何処かに飛ばしただけだしね。」
「・・・マリア、それ、あんま使うな。」
あれ、なんか持ち上げて落とされた。
この世界とは別の空間に飛ばしたけどローレイさんはそれを知らないからね。
魔物をばら撒いたと思ってるかもね。
エルフはどこかな?
「あ、エルフ見っけ。」
く、こっちもデカイな。
メロンが二つもあるなんて。
こっちは青紫色の皮膚に刺青みたいなのが描かれたエルフ。
髪は植物っぽい。
「おい、マリア。
なんかあのエルフ、白目で泡吹いて痙攣してるんだが大丈夫か?
『魔払の杖』の副作用か?」
「巨乳に慈悲無し。」
「は?」
「うん、このエルフは私に任せといて!
私が回復させとくよ。
あと、他のエルフの居る所に転移させてあげとこうかな。」
「他のエルフ?
もしかしてエルフの森に転移させるのか?」
これで分かった。
エルフはみんな巨乳なんだ!
もう、敵認定でいいよね!
そういや、エルフって知性があるのかな?
・・・ふ、胸に栄養を取られた奴に知性なんてないよね!
「まぁね。
・・・【魔王の契約】。」
私はエルフに近づいてエルフの頭に手を置いて【魔王の契約】を使った。
抵抗も無く配下にしました。
「お、おい、マリア。
なんかさっきの不浄蟲と同じような消え方をしたんだが。
お前、もしかして・・・。」
「大丈夫、大丈夫!
憔悴してるから私の《時空間》で休ませてるだけだからね。
ただ、似てるだけだって。
それじゃ、ここには用が無いし私は帰るね!
じゃあね、ローレイさん!
あ、このポーチをあげる!
【ボックス】で容量は増えてるから活用してね!」
配下にしたら自動的に亜空間に入れられるからね。
私はローレイさんに別れを告げてお城に帰った。
もちろん、【浄化】を使ったよ。
後でスキルも調べないとね!