第十ニ話 私、荷物のように担がれました。
いやー、ビックリしたよ。
質問に答えてたらヤハルさんが泣きながら抱き締めてくるもん。
号泣だよ、号泣。
顔がグッチャグチャだったんだよ、涙とか鼻水で。
それも、
『大丈夫』『安心して』『私は味方』
とか囁きながら背中をポンポンと叩いてくるし。
しかもヤハルさんの方が背が高いからさ、私の顔が丁度胸に当たったんだけど、ムニュ?って見た目に反して柔らかかった。
く、味方だと思ってたのに、隠れてたのか!
苦しくなって顔を横にずらしたらヤハルさんと目が合ったらもっと力強く抱き締めてくるからね。
この人、思ってた人と違う!?
キリッとした麗人はどこにいったの!?
でもその後も大変だった。
突然ドアを叩かれたと思ったら大きい人が入って来て、
『勇者を鍛えるので!』
と言いながら私に抱き付いてたヤハルさんを引き剥がして私を肩に担いでその場から逃げたからね。
ヤハルさんも、
『止めて下さい!
勇者様には剣ではなく愛情が、訓練ではなく常識が必要なんです!!』
て叫んでたよ。
いやー、ヤハルさんの顔が怖かった。
大きい人とは反対の方に顔が向いてるからはっきりと見えたよ。
まるで子供を取られた般若みたいな血相だったんだけど、本当にどうしたの?
しかも私が常識無いみたいに言ってるし。
私、非常識じゃないもん!!
それで今は担がれたまま移動してるところです。
「勇者、あたしはレガリア・ディーバード!
勇者の武道の師匠になったからな!」
え?
この状態で自己紹介ですか!?
「はい、分かりました。
私は早乙女 雫です。
宜しくお願いします、レガリア師匠。」
でも挨拶はちゃんとしないとね!
「分かった!
早速訓練に入るから覚悟しとけ!」
「はい!」
なんか、こう、男らしいね!
見た目は鎧に包まれてるから分からないけどレガリアさん、絶対筋肉が凄い事になってると思う。
声は女性っぽいから女の人なのかな?
この世界は発育がいいんですね、私の倍は有ったから3メートル超えてるんじゃないですか?
レガリアさんと比べたら私、凄い幼く見えるんじゃないかな?
これでも女子高生なのに、幼く見えるとか嫌だ。
それにこの格好、女の子がされて良いもんじゃない!
なんですか、人を荷物みたいに肩に担いで!
でも降ろしてなんて言えない。
言っても意味がなさそうだし。
「よし、着いたぞ!」
あ、もう終わりですか。
あれ、ここって朝見た訓練所だよね?