第百十八話 私、不思議な道具を持つ少女と名乗りました。
私は泣き出してしまったローレイさんに謝罪しつつ慰めた。
地下水路の暗闇は平気なのにゾンビフェイスが苦手なんておかしいとは思ったけどそこは人によって違うからね。
私だってゲームは好きだけど賭け事は嫌いだし同じ様なもんでしょ。
あとは孤児について軽い説明をしたら分かってくれた。
「なぁ、マリア。
オレさ、お前に色々と聞きたい事が有るんだけどよ。」
ローレイさんが険しい顔つきで私に問い掛けてくる。
元々目付きの悪いローレイさんが人を睨むとさらに怖くなるね。
「どーぞ、どーぞ。
私の意見なら幾らでも話すよ!」
私はそんな空気を和らげようと気軽に返事をする。
う〜ん、まだローレイさんの顔が険しいね。
「お前は何者だ?」
「私はダークヒロイン、みんなが大好きブラック・マリアだよ!」
ゲームでよく見たような格好いい決めポーズをしながらもう一度ローレイさんに名乗ってみた。
「ダークヒロイン?
んだよ、それ、聞いた事ねぇよ。
何処の組織なんだよ?」
ダークヒロインが組織名だとローレイさんが勘違いしてる。
ダークヒロインって言葉はこっちの世界には無いのかな?
まぁ、ローレイさんは名前じゃなくて私の存在を知りたいみたいだけどね。
「いやー、グループには入ってないよ。
そうだね、私は簡単に言うと不思議な道具を沢山持ってる少女って認識でいいよ。」
「不思議な道具?」
「そう!
例えばコレだね。」
私は魔力でローレイさんが持ってる『技能図鑑』と同じ本を作って見せた。
「はぁ、本?
何処から出したんだよ、そんなもん。
・・・おい、それって。」
「そ、ローレイさんに渡した『技能図鑑』だよ。
ローレイさんも使ってくれた不思議な道具。
これ以外にも炎の斬撃を放つ剣とか物に当たるまで飛び続ける矢とかね。」
魔力で作ればあるよ。
「なんだよ、それ。
お前、なんでそんなに魔本や魔道具を持ってんだよ。」
これは不思議な道具。
決して魔本や魔道具じゃない。
ちょっと私が魔力で改造した物に過ぎないからね。
ローレイさんにはこのまま誤解してもらおう。
嘘はつかない。
でも真実も言わない。
「それは秘密!
それで『技能図鑑』に載ってるスキルは私も全部取ってるから効果が分からないスキルが有ったら言ってみて!
今なら教えられるよ。」
「効果が分からないスキル、か。」
ん、なんかローレイさんの歯切れが悪いね。
《時空間》とか訳の分からないスキルってローレイさんの記憶で言ってるのを知ってるのに。
あ、そうか。
必然として『押し潰し』の事も話さないといけないからね。
人を消したスキルって認識だったし。
そりゃ、話し辛くもなるかな。
「ローレイさん、私は人の記憶を読み取る道具にも心当たりがあるんだけどなー。」
あ、ローレイさんがびくりと震えた。
そして口を何度か開け閉めをしてる。
驚愕のあまり言葉が出ないみたい。
「お前、オレの記憶を読んだのか!?」
「大体ね!」
私は飛びっきりの笑顔で答える。
仮面越しで分からないかもしれないけど。
「あり得ねぇ。
そんな魔道具なんて国宝もんじゃねぇかよ。
お前、どっかの王族かよ。」
「それは秘密!」
「あー、そうかよ。
んじゃ、聞くけどよ。
オレが消した男を街中で見かけたんだ。
あのスキルは相手を消すんじゃなくて転移させるスキルなのか?」
「いや、違うよ。
ローレイさんが使ったスキルは時間、空間に干渉出来るスキル、《時空間》って奴だよ。
ローレイさんは魔力で作った亜空間に悪者を入れてったんだよ。」
「・・・は?」
あ、ローレイさんが分かってないな。
「簡単に言うとローレイさんが作った牢屋に悪者を閉じ込めてたんだよ。
そして私はその悪者を利用してるって訳だね!」
「・・・は?」
「街中で見かけたのは私の配下になった人だね。
ほら、『技能図鑑』に【奴隷術】が載ってたじゃん。
悪者を利用して他の悪者を捕まえさせてまた私の配下に加える。
そうすると悪者は減る、私の配下は増える。
一石二鳥だね!」
「・・・お前は何がしたいんだ?」
あれ、もしかして、ローレイさん、私に対して【功罰の秤】と【ダウナー】を使ってる?
もしかして私が悪巧みをしてると思ってるのかな?
「そんなの決まってるよ。
治安向上の為に悪者さん達に慈善活動をさせるんだよ。
そしたら、もっとこの世界は良くなるよ。
悪い人が少なくなるからね。
だからさ、ローレイさんにも協力して欲しいんだ。」
「オレが?」
「そう。
悪者をどんどん捕まえちゃってよ。
殺すよりも利用した方が良いよ。
死んだだけじゃ、すぐに終わっちゃうよ。
それだけじゃ、罪の償いにはならないよ。」
「・・・罪・・・償い。」
「生きてる間、周りの人の為に働く。
迷惑を掛けた分だけね。
これが一番の償いじゃないかな。」
「それは・・・でも、そんな事が出来んのかよ?」
「私はそれでやってくつもりだよ。
あ、そうそう、バララークさんも今は私の配下で働いてもらってるよ。」
「はぁ!?」