第百五話 私、ローレイさんの渾名を知りました。
ヤハルさんと一緒にがセレブ御用達の仕立て屋さんに入って一枚の布を持って私に見せて来た。
「シズク様、この布地は如何でございましょうか?
この鮮やかな色や手触り、中々の物だと思われます。」
「はい、それは綿のエルフから採れた物を一流の職人が属性を込めながら織った布地でして。
美しく防御に優れた物を仕立てる事が出来ます。」
すかさず、お店の人が勧めてくる。
綿のエルフ。
エルフから採れた物って・・・色々と大丈夫なの?
毛なの、その綿はエルフの毛なの?
そういえば私の配下にも牛エルフのクーがいたっけ。
あー、私はクーが何の植物か知らないね。
今度クーに会ったら鑑定してみようかな。
何か分かるかもしれないし。
「防御面とはどういう事でしょうか?」
店員さんの声に反応する私。
でも意識はスラムに居たローレイさんの記憶に傾いてる。
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俺は今までになく元気だ。
体の奥底から元気が溢れ出すような感覚が止まらない。
あの時、あの豚に捕まってマリアに会ってからずっとこの調子だ。
前方に強盗有り。
来た!!
俺は急いで念移動で移動する。
マリアに会ってからこの感覚も始まった。
幻聴に似た感覚と景色が暗くなり悪い奴だけが光り輝いて見える感覚。
「【コゥバッノォハカリィィィ】!!!」
そのまま悪い奴に突撃した。
今の俺は昔の俺とは大違いだ。
スピードもパワーも持久力も段違いだ!
ゴン!!
「ガッ!」
「アハハハハハハ!!!
オメェがワリィオメェがワリィオメェがワリィィィ!」
ゴン!
ベキ!
グチュ!
「ガ、ギェ、グェ。」
「お、おい、衛士隊だ!
衛士隊を呼んでくれ!
またあいつが、『押し潰し』が出た!」
ケ!
また邪魔が入りやがった。
マリアから貰った『技能図鑑』で習得した《時空間》でこいつを閉じ込めて次の奴を探すか。
【隠形】と【気配遮断】で姿を隠して逃げるか。
前方に詐欺師有り。
突撃だ!!!
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えっと、凄い事になっちゃってるね。
ローレイさんが悪人狩りをやり過ぎて『押し潰し』なんて呼ばれてたし。
あ、でもこの前渡しておいた『技能図鑑』は活用してくれてたんだ。
配下に渡すスキルを考えるのが面倒臭いから私が習得したスキルを載せた図鑑を作ってローレイさんに渡しておいたんだよね。
スキルの名前を言うとスキルを渡すようにあの子に伝えておいたし、図鑑にも名前を言えばスキルを習得出来る説明を書いてたしね。
図鑑も私の魔力を通して情報が自動更新されるようになってる。
ローレイさんに試験用に使って貰ってるんだけど、気に入ったみたい。
・・・そのせいであの子の干渉を受けて壊れちゃったみたいだけど。
ま、まぁ、あの子の悪人案内も上手くいってるみたいだし結果オーライだね!
今のローレイさんと話してみたいような怖いような。
まぁ、またの機会ということで。
「ではこちらの物はどうですか!?
ある蟲人のシルクでして!
斬撃や刺突攻撃の耐性がある物に仕立てあげられます!」
「はぁ、そうですか。」
なんか店員さんの勧め方が防御面に特化してる布地を勧めてくるね。
まぁ、私が無意識の内にそういう風に聞いてるんだけどね。
もう帰ろっかな。