第百四話 私、城下街に来ました。
ウォンバットさんとコペル君が帰った後、私はヤハルさんにこんな提案をしてみた。
「ヤハルさん、城下街に行きたいです。」
今まで森や草原に行った事はあるけれど城下街には行った事がないからね。
異世界の街を見てみたい。
静は城の中しか知らない。
娘と一緒に街の中を歩き周りたい。
娘の遊び相手を見つけてあげたい。
ゴロツキに襲われても私が返り討ちに出来る。
色々とヤハルさんに伝えながら城下街に行く事を頼むと涙ぐみながら、
「分かりました!
では一緒に参りましょう!!」
と言ってあれこれ準備して今に至る。
うん、今はヤハルさんと静、忍とお城の外、上品なお店が多い区域を歩いてる。
もちろん、忍は上空に姿をスキルで隠してついて来てる。
建物の屋根から屋根へと飛び回る様子は本当の忍者みたいだね。
忍がまた空を自由に飛びたいって言った。
だから【ジャンプ】【アクロバット】【魔力操作】なんかのスキルを渡して、
『自分の魔力で飛んでみない?』
って聞いたら大喜びでやり始めた。
ちゃんと《時空間》で見守りつつ私の魔力を上空から垂らして命綱として纏わせてるから失敗したらバンジージャンプみたいになるようにした。
でも忍はすぐにスキルを駆使して今の忍者プレイをやってる。
空は飛べてないけど忍が満足してるならいいや。
それでヤハルさんに連れて来られたのは貴婦人が喜びそうな店だった。
肌触りの良い布地で服を仕立ててくれるセレブ御用達の仕立て屋さん。
高価で綺麗で上品なアクセサリーを扱う大商会さん。
ペットとして調教された可愛い魔物が売られているペット屋さん。
城下街で唯一の甘味を取り扱う喫茶店。
・・・ごめん、ヤハルさん。
私は魔物と戦える人達が行く酒場とか武器屋とかを見たいんだよ。
後は奴隷店だね。
バララークさんの情報ではもっと外れた所にあるみたいだしね。
後はこの城下街のスラムも見たい。
犯罪組織を一網打尽にしたい。
だからヤハルさんの存在が邪魔だね。
まぁ、今回は《時空間》で様子だけにしておこう。
まずはスラムからだね!
え〜と、どれどれ。
あ、ローレイさん、見っけ。
なんか様子がおかしいね。
聞こえないけどブツブツ独り言を言ってるし目が虚ろだね。
あ、動いた。
路地裏に入って行っちゃった。
《時空間》の視点をずらしてっと。
お、麻袋を担いだ男の後頭部に頭突きしてたね。
麻袋を担いでた男が倒れて麻袋から子供くらいの手が見えてるね。
もしかして人攫いかな。
グッジョブ、ローレイさん。
でも本当に様子がおかしいね。
もしかしてあの子を入れたから狂っちゃったかな?
あー、私のせいかな?
うん、あの子にローレイさんの心を治してもらおう。
その後にあの子にローレイさんを壊さないように言わないとね。
丁度良いから私も声を掛けてみようかな?