第百三話 私、闇属性について聞きました。
「ングング・・・うむ、このギュドンとやらも美味であるな!
勇者、もう一杯、おかわりを頼めるか?」
ウォンバットさんが片手にスプーンを持ってもう片方で空っぽの丼を私に差し出しながら言ってきた。
・・・遠慮とかないのかな。
これで5杯目なんだけど。
それによく食べるね。
その細身のどこに入って行くのやら。
魔力で中身を補充してまたウォンバットさんに渡す。
「はい、どうぞ。」
「うむ、勇者よ、ありがとう!
ングング!!」
渡すと直ぐに掻き込んで牛丼を食べ始めるウォンバットさん。
どうみても吸血鬼が牛丼を貪り食う所にしか見えないよ。
「ごちそうさまでした。」
「ギュドンとやらも美味しかったです。
やはりシズク様は料理が上手です。
わたしからシズク様に教えられる事は無かったようです。」
「はい、お粗末様でした。
それとギュドンでは無くて牛丼です。」
コペル君とヤハルさんも食べ終わった。
二人の空っぽになった丼とスプーンを魔力に戻しながら礼を言う。
でも食べるのが早いね。
私のはまだ半分も残ってるのに。
まぁ、ゆっくりと味わうけど。
また丼に箸を突っ込んで牛肉と米を一緒に食べる。
う〜ん、デリシャス!
「それにしても勇者のその技術も便利であるな。
魔力の物質化、であったか?
我々にも可能ならば様々な所で利用されるであろうがな。」
「そうですね。
便利な技術なんですけどね。
人に教えるとしても呼吸の仕方を教えるようなものですからね。
感覚でしか伝えられませんからね。」
「そもそも魔力をスキルを使わずに消費させる事も聞いた事もない。
勇者の世界の種族特性とも考えられるのである。」
特性じゃ無くて《魔法の極み》のお陰でなんだけどね。
「もう少し食べたいがこれ以上は止めておこう。
美味しかった。」
「はい、お粗末様です。」
やっとウォンバットさんも満足したみたいだね。
本当にお腹が膨らんでないように見えるね。
羨ましいね。
ま、私も同じ体になってるけど。
《狂人の宴》でね。
「それにしても魔力を流し込まれるとレベルが上がるとは思いもしなかったのである。
これは勇者の魔力だけ当てはまるのか、それとも他の者の魔力でも出来るか実験した方が良さそうであるな!」
「はい、わたしもシズク様から魔力を流された後に神殿に向かうと無事にレベルが上がりました。」
どうやらウォンバットさんやヤハルさんのレベルも上がったみたい。
静や忍達の急激なレベルアップも私の魔力供給が原因だったみたいだし謎が解けたよ。
あ、ゴブリン達のレベルアップも私の魔力のお陰かな?
「そして新しく手に入れたスキルも有能な物ばかりで再度、勇者に感謝しよう。
ありがとう。」
「はい。」
ウォンバットさんが嬉しい事を言ってくれるけど口元に米粒が付いてますよ。
「特に【魔力感知】は素晴らしい!
あのスキルのお陰でさらなる深淵の神秘を感じ取れたのである!」
ウォンバットさんって本当に闇属性が好きなんだね。
そういえばあの質問をしてみようかな。
「ウォンバットさん、質問をしてもいいですか?」
「うむ、ギュドンのお礼として答えよう。
何が聞きたいのであるか?」
「闇属性のスキルってどんなのがあるんですか?
いまいち想像が出来ないのですけど。」
【ダークボール】が当たっても痛く無かったしね。
「闇属性のスキルについての質問であるか。
一概には言えないが闇属性は光属性と対を成す属性のせいか状態異常にするスキルが多いのである。」
「状態異常ですか。」
なら毒とか即死とかも闇属性なのかな?
「そして魔物には総じて効き目がないのである。
一説には魔神は元々、闇属性の上位スピリットと言われていてその従属である魔物は闇属性の耐性が高いらしいのである。」
うん?
魔物には効き目がない?
それなら私も魔物判定なのかな?
まぁ、元魔王だからかな。
「しかし、闇属性は人に対しては絶大なる威力を発揮するのである。
これは人が女神メカルーネ様に造られた事によって光属性を内蔵しているのではないかとというのが説が有力である。」
光属性か。
う〜ん、【浄化】や【ヒール】かな。
「つまり種族の弱点属性という訳である。」
「なるほど。」
つまり、人は闇属性に弱いという訳なのかな?
「されど、人は全ての属性に耐性がないのであるから闇属性だけが弱点という訳ではないのである。」
あー、まぁ、人だからね。