第十話 私、教育係のヤハルさんに会いました。
「勇者様、今日から教育係を承りました、ヤハルと申します。
以後、宜しくお願いいたします。」
パンとスープという質素な朝ご飯を食べてお嬢様が着るような白一色のワンピースを着た私に向かって慇懃に礼をしてきた。
その人、ヤハルさんは男装が似合いそうな女性だった。
メイド服より燕尾服が似合いそうだね!
つり目に細い顔、体付きは・・・スタイリッシュですね!
微妙に耳が長いような気がしますね。
表情もクールな人です。
ザ・宝塚の麗人!
教育係か〜。
昨日の悪口合戦で、
『この世界の常識を学ばせねば危険だ!!』
て唾を飛ばしながら言ってたハゲの人が居たからなー。
私、人畜無害な元魔王なんだけどな〜。
あ、十分危険な存在だった。
「はい、こちらこそお願いします、ヤハルさん。」
「はい、ではまずは勇者様の世界の事を聞かせてもらえますか?」
ヤハルさん、私の事は勇者様としか言わないなー。
いや、様付けにしてるのって似合うからいいんだけど、というかご主人様とかお嬢様とか言ってもらいたいぐらいだね。
そういえば私、どっちの世界の事を言えばいいかな?
う〜ん、日本はこの世界とかけ離れてるし魔王時代の世界なんて言ったら・・・大丈夫そうだね!
魔王だったって言わなければ大丈夫な筈!
「こちらから質問をしましょうか?」
間が長く空いたからヤハルさんがしてくれるみたい。
そっちの方が隠しやすいよね!
「はい、お願いします。」
「では一つ目、勇者様の世界にも魔物はいましたか?」
「はい、いました。」
似て非なる者だと思うけどね!
「勇者様の世界にもスキルという能力やレベルという概念はありましたか?」
「はい、両方ともあります。」
そういや私、蝙蝠を配下にしたけど、スキルは手に入れたのかな?
世界が違うから手に入りませんでしたなんて事になったらただの捕まえた配下を召喚して戦わせるだけの存在になっちゃうよ!?
レベルの方もどうなんだろう?
魔王時代のレベルって戦ったら貯まるポイント、経験値って呼んでたけどそれが一定まで貯まったらレベルが上がってたんだけどね!
「勇者様は魔物を倒した事はありますか?」
「はい、あります。」
え?
魔王が魔物を倒したらいけないんじゃないかって?
戦わないとレベルが上がらないから戦ったよ、配下と。
後は魔王だから敵対勢力も居たからね。
「勇者様は人を殺した事はありますか?」
「それは私の世界の『人』ですか?
それともこの世界での『人』ですか?」
世界によって『人』って変わるんだよ。
日本では『人』って人間だけ。
魔王時代の世界は人型で知性がある者が『人』ってされてたけど人型以外にも知性を持っていて話し合いが出来る存在はいたから私がその区切りを壊した。
この世界ではどうなんだろうね。
「失言でした。
では質問を変えます。
同族を殺した事はありますか?」
「いえ、ありません。」
ん?
敵対勢力が居たんじゃなかった?
全員、配下済みです!
その後もヤハルさんからの質問が続きましたがヤハルさん、目が輝いていませんか?
異世界にでも興味があるのかな?
う〜ん、日本の方の話が良かったかな〜?