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美容院の苦悩

先日、地元の駅で美容師さんに声をかけられた。


「ヘアモデルやってもらえませんかー?」

「髪の毛切ったりしなくて、写真も撮らないのなら。」

「...じ、じゃぁ、ヘアセットアップのモデルお願いします」


パニック障害の場所として、美容院もあまりよろしくない。

それでも引き受けたのはその美容室はこんなパチンコ屋だらけの田舎町にある唯一のこじゃれた店で、店長さんとも以前からの顔見知りだったからである。


お店に向かうとさっそくセットアップが始まった。

セットアップと言われてもピンとこないかもしれないが、

いうなればヘアショーに出す髪型の練習台だ。


女性スタッフのお姉ちゃんが私の髪をいじりだすと、

後ろの方で店長さんがぼやきだす。


「いいなぁ、人間見つかって...」


どうやら店長さんはモデルが見つからず、

マネキン相手に練習をしているらしい。


もう一人男性のスタッフがいたが、

彼も同様に見つからなかったらしく、

マネキンの相手をしている。


お姉ちゃんは私の右側の髪の毛をやっている。

左と後ろは空いてるわけだ。


「じゃ、残ったところで練習してみるとか...?」


私がぼそりと口にすると、

店長さんとスタッフさん二人が目を輝かして、


「そうだね!まだいじっていない方だしこっちで練習させてもらおう!」


そして私は3人に囲まれるはめとなった。


私の髪の毛をいじりながら、

まず店長さんが、

「いいなぁ、人間でやるって・・・」


そして、女性スタッフの方が、

「人間いいですよねぇ...」


最後に男性スタッフの方が、

「やっぱり人間でやってみないとねぇ...」



「......」



計り知れぬ美容師の苦悩を見た気がした。

この日はお姉ちゃんのセットアップ練習が終わったあと、

結局残り二人のセットアップ練習もやることになった。

当然店長さんは最後まで、



「人間ていいなぁ...」



と呟いていた。

黒ミサにでも、行ったような気分だ。


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