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ロマンス
オレンジが目の高さまである紙袋にギッシリと詰まり、
重量に耐え切れず、とうとう悲鳴をあげてやぶける。
坂を転がるオレンジ。
それを追いかける少女。
坂の上から落ちてきたオレンジに気付く青年。
拾おうとした手と手が触れ合う。
まさにロマンス。
また、先日こんな話もした。
目覚ましが鳴らなかった。
このままでは学校に遅刻してしまう。
食パンを口にくわえ道を急ぐ。
角をまがった途端、誰かにぶつかった衝撃が。
痛みに耐えつつ目をあけるとそこには…
まさにロマンス。
そんな妄想、したことありませんでしたか、あなた。
私は常にです。
そうしたら先日。
とうとう遭遇したのだ、そんなロマンスに。
仕事場のそばのゆるやかな坂。
転がる転がる、
5Kgはあると思われる、
冷凍肉塊達。
さぁ、ニッコリと笑って、
あのステキな肉業者お兄さんに肉を手渡すのよ!
重みでぷるぷると震える腕と腕が触れあい、
そこからロマンスが生まれるのよ。
やっぱ、無理。
ロマンス、いいや。