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夏の記憶
夏の空気の匂いがした。
だからつい感傷的になって、
夏の匂いに導かれた記憶が呼び起こされる。
友人がバイク事故で死んでしまったり、
知人が自殺未遂を起こしたことだったり、
別れた男性の友人から、
「○○があんた殺すって言ってるよ」
と言われたことだったり。
いや、待て。
だからなんで死んだり、死にそこなったり、
殺されそうになったりの話ばかりなんだ。
もっといい思い出があるはずだ。
夏らではの心温まるような、
ポカポカした思い出があるはずだ。
夏の匂いと共に印象に残っている何かがあったはずだ。
あぁ、あった。
皆で公園に集まって朝まで喋っていたね。
暑い暑いと言いながら、アイスクリームを食べ、
下らない話をひたすら続けていたね。
バイクにのって、肉マンを買いにいったりもした。
うん、いいぞ。
胸の奥がポッと温まるようでいて、一抹の切なさを感じさせる、
まさに青春というような記憶だ。
さぁ、それからどうしたんだったかな。
あぁ、思い出した。
警察に補導されたんだったわ。
だから夏は嫌いなんだ。