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優しさという名の暴挙

■6月18日

週の半ばにして飲んできた。

名をめいちゃという。


実は彼は、最近彼女と別れたばかりだ。

そこで心優しい私は、

「どう、まだ落ち込んでいる?」

「飲みにでもいく?」

「ていうか、当然まだ落ち込んでいるよね?」

「むしろ落ち込みすぎて飲みたいはずだ」

「いや、とにかくもうアナタは私と飲みにいくべきだ」

「いいから新宿で飲むぞコノヤロー」

と、深い深い気遣いをもって彼と飲むことにしたのである。


居酒屋のあと、やはり心優しい私は、

「ストレス解消には歌うのがいい。いいはずだ。いいに決まっている」

とカラオケに向かい、

「アナタの歌声がめっちゃツボでねぇ」

と言いながら失恋の歌ばかりをねだり、

槙原敬之の「もう恋なんてしないなんて」の


一緒にいるときは窮屈だったけど、

自由を手に入れたら寂しくなった


という歌詞のところで一瞬口ごもった彼を笑い、

おそらく彼の脳裏によぎったであろう過去を想像して笑い、

「な、なによ…」

と複雑そうな表情をした彼を見てなおさら嬉しそうに笑って、

少し彼を拗ねさせた。

心優しさ故の笑いであって、本心から笑ったわけではないのに、

伝わらなかったようで残念だ。


いやー、別れたての人間をいじるのは、


楽しいね。


まだしばらくは落ち込んでいるはずだから、また飲みに誘わなければ。

自分の優しさにさえ、酔ってしまいそうだ。


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