ライカンスロープ
光が射してきて、目を覚ました。
そこには、見知らぬ天井が広がっていた。
最近、見知らぬところで、よく目を覚ますな。
ここまで来ると自分が夢遊病じゃないかと疑いたくなる。
そんなことを思いながら、体を起こす。
前目が覚めた時は、森の中だった。そして、体の節々が痛かった。だが、今回は大きく違う。
屋内の一室で、ベットの上だ。そして、上半身には包帯が大量に巻き付けられており、
誰かが手当をしてくれたみたいだった。
この包帯の量から察するに大層な怪我を負っていたことがわかる。
状況を整理しようと思考を巡らすと、若干、頭痛がした。
俺は図書館で、暗闇に飲み込まれたんだ。そして、森の中、人型の獣襲われて……
最後、女の子を庇って……あの怪物との間に割って入ったんだ。
やっと、そこまで思い出し、自分の体は無事かと、腕を回したり、
首もとを触ったりしてみる。無事みたいだ。
ただ、予想以上に痛みがなかったことに自分でも驚いた。
自分の記憶と、この包帯の量が確かならば、生死をさまようかどうかの怪我を負っていたと思うのだか。
そんなことを考えていた時に、廊下から足音が聞こえ、部屋のドアが開いた。
恰幅の良い40代くらいの女性が入ってきた。
「目が覚めたのかい。体は大丈夫かい? 」
この人が、面倒をみてくれたのだろうか。
「体は大丈夫みたいです。すみません。ご迷惑をおかけしたみたいで。」
ベットから降りようとする。
「何言ってるんだい。あんな大怪我負っていたんだから、休んでいなきゃダメだよ。」
ベットから立ち上がろうとするのを早々に静止させれる。
「あたしは、ここ聖カレント教会学院の寮の寮長を務めているメイサだ。よろしくね。」
寮長と言われると、納得感がある。炊事に洗濯、子供の面倒までみてしまいそうなイメージそのままだ。
「どうも、タイガって言います。あの、メイサさん。なんで俺はここにいるんでしょうか。」
ここに来て初めて、まともに質問できる機会に巡りあう。
「あんたは学園のハンター達に運ばれてきたんだよ。ミライと、ラムザに。」
「人狼との戦いの中、ミライが自分が油断したせいで、あんたに怪我を負わせてしまったって言ってたよ。でも、無事で良かった。」
ミライとは、あの二丁拳銃使いの子のことだろうか。
「あの、人狼って何です?もしかして、 狼男ってヤツですか? 」
「あんた、この辺で見ない顔だと思ったら、人狼も知らないのかい。そう狼男だね。ライカンスロープとも言うね。」
この世界では、人型の獣がいることが常識のようだ。
「あんたはホントに運がいいよ。人狼に噛まれたら、人間の意識がなくなり、同種の人狼になっちゃうもんなんだよ。」
首を擦りながら、噛まれたあとがないか確認する。包帯越してよくわからない。
「噛まれても、人狼にならないときもあるんですよね? 」
心配になって確認する。
「基本的には人狼になるって聞いているよ。ならないケースって……甘噛みの時とかかい?
本気で噛まれてたら、もうあんた、今頃野生に返って森の中さ。」
うまいことを言ったつもりでいるのか、くすくす笑っている。
しかし、俺にとっては笑えない冗談だった。
おいおい、マジですが……