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オオカミさんと二丁拳銃  作者: 帰来 青春
第一章 懐かしい人
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本の暗闇

窓から夕日が差し込んできた。夕日による反射で携帯の画面も見にくくなってきた。

仕方なく、辺りを見渡すと、制服を着た中学生、高校生、大学生といった学生諸君は

机に向かって、一心不乱に勉強をしていた。


居眠りをしているのは、本当に一部の学生と、

その年で何を勉強しているかわからないオジ様くらいのものだ。



本当に何が楽しくて勉強するのか。



数列、ベクトル、行列。



俺は行列ができる店は嫌いなんだよ。

もとい数学の行列なんか好きになれる訳がない。



図書館の自習室の机に問題集を枕代わりに頭を突っ伏して、

考えて悩んでいるものの眠気ばかり襲ってくる。



「休憩だ、休憩。」



図書館の自習室は四階にある。気分転換に本でも少し読もうと思い、三階に移動する。

三階の壁には背丈より高い本棚が並んでおり、昔懐かしい童話から、最近の小説まで揃っている。


フロアには、壁に並ぶ本棚ほど高くはないが、背丈より少し高いくらいの本棚が数多く配置されている。

本当に本が多い図書館だ。


俺はこの図書館が好きだ、幼少の頃から一人で本を読みにきており、多くのときを過ごしてきた。

しかし、残念ながら、ここの図書館はあと一ヶ月で閉館してしまうのだ。


大学受験に落ちたこと、幼少の頃から通っていた図書館が閉館してしまうことを考えると、

センチメタルな気持ちになる。



そんな感傷に浸りながら、本棚を眺めていると、少し埃を被っているが、懐かしい本が置いてあることに気づいた。


"ヴァンパイアハンターA"

西洋の童話で、ヴァンパイアに民衆が脅かされている世界で、

教会がヴァンパイアを討伐するため、ハンターを養成して、反旗を翻す物語だ。


童話ではあったが、教会から派遣されたハンターと、ヴァンパイアの攻防がスリリングで

当時中学生だった自分も興奮したのを覚えている。


俺にはきっとヴァンパイアの血が流れていると、中二病に被れたのもいい思い出だ。

そんな思い出に浸りつつ、本を手に取り、流し読みを始める。



そうそう、この本に出てくる女ハンターが格好良かったんだよなぁ。

人の重さを感じさせないように宙を舞い、ヴァンパイアに銃弾を浴びせて行く、二丁拳銃使いのハンター。

名前は確か、アスハ…… なんだっけ?


お気に入りだった登場人物の名前も思い出せない。

ましてや最後の結末も覚えていない。


ただ面白かったという気持ちだけは覚えており、物語の結末が気になっていく。

本を擦るようにページを次々めくっていった。


結末を知りたいという気持ちとは裏腹に、後半に進むに連れて、紙面が黒ずんでいて、文字が読みにくくなっていた。

そして、あと数ページってところで、紙面が真っ黒で文字は読めたものではなかった。


これでは、結末はわからない。



その時だった。



両開きになった真っ黒のページの色味が徐々に深みを増して、光を飲み込む漆黒のように変化した。

そして、漆黒の闇は波打ち水面のように、紙面から本を持っている手、腕と、飲み込んでいく。


「うぁ、あぁぁぁ!」


情けない声が図書館に響くのもつかの間、闇は体中を飲み込み、再び、思考だけの暗闇が訪れた。

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