真夜中の追跡者
追っ手の物音が聞こえた。目の前にいる一般人にも危険を促し、駆け出した。
走りながら、神経を研ぎ澄ます。
右後方に二体、左後方に四体、計六体といったところかしら。
あと、私の後方に初対面のお荷物くんが一人。
さて、どうしたものか。
「なんか、もう追いつかれるまで時間の問題だと思うんだが。」
後方から弱音が漏れる。
その矢先、お荷物くんの後方から一匹の人狼が姿を現した。飛び上がり、側面の木を蹴り、木を踏み台にして、襲いかかってくる。
もうここでやるしかないかしら。
片足を前に踏み出し、強引にブレーキをかける。ブレーキによる土煙に背を向けるように体を反転させる。
反転した頃には、逆サイドからもう一体人狼が姿を現わす。
右手の銃の標準を合わせて、引き金を引く。すかさず左手でガンホルダーから、銃を取り出す。
左手の銃の引き金を引く頃には、最初の人狼が嗚咽交じりに吹き飛んだ。
再び、銃声が響く。
逆サイドから出てきた人狼にも着弾し、走りながら倒れ込んでいた。
「あと四体! 」
お荷物くんのほうに駆け寄りつつ、第二波の迎撃態勢に入る。
今度は同時に、三体。
「お荷物くん、しゃがんで。」
真ん中の一体は、彼を獲物として認識したようだ。
「勝手にお荷物扱いするんじゃない!俺の名前はタイガだ。」
口答えしながらも、彼も命は欲しいのだろう。素早くしゃがみ込んだ。
左右に出て来た二体の人狼に銃弾をぶち込む。
「じゃあ、タイガ、ちょっと目を閉じてて。いいって言うまで、目を開けちゃダメだからね。」
これからやる技はしゃがみ込んでる男の頭上でやるにはリスキーだっため、警告を促す。
「はぁぁぁぁ! 」
声と共に気合を入れて、タイガの頭上まで、飛びかかっていた人狼めがけて、回し蹴りを喰らわす。
ブーツのカカトが人狼の顎にクリーンヒットした。
間髪いれず、正面からまた一体が単身で特攻してくる。
「こんなところで、やられてられないんだから!」
ここに来るまでに、既にヴァンパイア一体と交戦していたため、体力も限界に近くなってきている。
疲れをかき消すためにも、声を張って、左右の銃で乱射する。
銃弾の雨音が周りに響く。
「終わったかしら……」
蜂の巣状態の人狼を盾にした状態から、もう一体姿を現した。
最初に六体だと思って、一瞬気を緩めた隙を突かれた。気を切り詰めなおすも、銃による応戦は間に合いそうにない。
容赦なく、人狼の爪が襲いかかってきた。