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オオカミさんと二丁拳銃  作者: 帰来 青春
第一章 懐かしい人
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突きつけられた銃口

運命を司る神様がいるとしたら、そんな神はぶっとばしてやりたい。

大学受験は落ちるわ、銃は突きつけられるわ、狼には追いかけられるわ……本当に災難続きだ。



目を覚まして辺りを見渡すと、見慣れない景色が広がっていた。

視界の周りには、背の高い木がいくつも立ちはだかっている。

木の隙間から見える空は、暗く蒼い。

そのためか、自分で光を発しているわけではない月がやたらに、まぶしく見える。


こんなにキレイな夜空を見るのは、いつぶりだろう……


地面に仰向けの状態だからであろうか、首筋や、手の甲に茂みの草があたり、チクチクする。

若干のむずかゆさを感じつつ、肌寒い夜風に、少し身震いして体を起こす。


ここは一帯どこなんだ。なんでこんなところにいるんだろうか。


自問自答してても始まらないので、体についている土を払いながら、立ち上がろうとする。

「痛っ。」

背中から腰、膝といった体の節々が、悲鳴をあげている。

筋肉痛というよりは、どこかに体を強打したような痛みだ。


本当にどうしてこんなことになったのか、節々の痛みを堪えて立ち上がった。


完全にどこかの森の中だ。辺りを見渡すと、風が吹き込んでくるほうが森が開けていて、何か見えそうだ。

体を少し引きづりながら、木と木の間を通り抜けていくと、愕然とする景色が広がっていた。



中世ヨーロッパのような城下町。真ん中には、西洋映画で見るような塔のような城が見える。

石畳、レンガ仕立てか、テレビの中でしか見たことのない建造物が視界に映る。

まだ、数キロは離れているので、町の中の様子までは、見る事ができないが、

明らかに俺が知っている日常とは、かけ離れた世界だ。


明らかな非日常に度肝を抜かれながらも、もう頭がどうにかなったしまったか、

色々バカらしくなってしまい、脳内で自分に問うてみる。


「頭でも打って幻想でも見ているのか。

それとも、最近のラノベやアニメでよくある剣と魔法のファンタジーの国にでも飛ばされちゃったか。」


まずを幻想かどうかを確認するため、定番のごとく頬をつねってみる。

痛覚を感じる。それは当然だ。さっきまで歩きながら、体が悲鳴をあげていたではないか。

ということは前者ではないことがわかる。



吹き抜ける風が、強さを増した。あまりの強さに後ろを振り返ると、

さっきまではいなかった。人影が見えた。


「なんでこんなところに人がいるのかしら。」


向こうもこちらに気づいたようだ。辺りを警戒しながら歩みよってくる。

次第に、月明かりが正体を露にする。

女性だ、いや、顔立ちから察するに、女子大生か、女子高生か同世代の女の子だ。


髪は亜麻色で長く、背丈は俺と同じくらいだから、170センチ超えるくらいか。

出で立ちは、ブーツにスカート。ここまでは、俺の知っている日常と対して変わらない格好だ。

しかし、上半身は、重厚な鎧こそ着てはいないが、プレートのような胸当てをしており、

肩と腰にはガンホルダー?のような物が二つ。ここからは非日常がにじみ出る。


凛とした姿勢からは、何かオーラのようなものを纏っているように見えた。

出会って一瞬だが、完全に目を奪われた。

そして、何より見慣れないものが彼女の右手で光っていた。


「あなた、人間?この辺で見ない顔ね。格好も何か変だし。」


彼女は疑い眼差しでこちらを見ている。

銃だ。銀色の拳銃。ただし、銃口はこちらを向けられていた。

学校で習ったわけではないが、条件反射的に両手を上に挙げた。


「見ればわかるだろ。れっきとした人間だよ。狼谷(カミヤ) 大牙(タイガ)、格好はオシャレじゃないけど、変ではないだろ。」

ジーパンにパーカというザ・普通な格好にいちゃもんをつけられたのと、

相手の口の聞き方に納得がいかず、強気に答える。

「っていうか、銃なんて物騒な物こっちに向けるなよな。」

でも、やっぱり銃は怖い……


彼女はこちらの強気な発言が、虚勢であるのを見透かしたようだ。

そして、疑うような鋭い眼光が、穏やかな目つきに変わり、こちらに向いていた銃口が下ろされた。


「あなたみたいな弱そうな人が、ヴァンパイアなわけないわね。私は……」


その瞬間、森の奥の方から獣の遠吠えのような声が聞こえた。

何かが茂みをかき分けてくる音が聞こえてきた。


「こんなところまで、追いかけてくるなんて。あなた! 死にたくなかったら、こっちよ、走りなさい。」

彼女はまた真剣な表情に戻った。



彼女のその表情と何よりヤバそうな遠吠えが相俟って、節々が痛む体に鞭を打つかのごとく、

指示されるがまま走り出した。


おいおい、そういえば、ヴァンパイアって言ったよな? 何言ってるんだ……

予想は完全に後者の方だったようだ。

もう、薄ら笑いを浮かべるしかなかった。

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