好きな人の
「そこまで光秀のことが好き? プライドの高いあんたが土下座をするほど、それほどまでに私と別れたいっての!? 許せないわ」
分かっている。濃の気持ちは分かっているし、濃もいい奴だ。それは分かっているからこそ、別れなきゃいけないんだ。
「今の俺とお前じゃ、釣り合わないから……。俺がお前の隣で歩いていても、いい笑いものさ。そんなの嫌だから、それに別れた方がお前も幸せになれると思うし」
一度光秀に恋をした俺なんて、濃には相応しくない。男が男に恋をするなんて、偏見を持たれて当然。そして男が好きな男と付き合っているとなれば、濃だって笑いもの。そうなって欲しくはないから。
「ええ、そうね! あんたなんかより素敵な人はもっと、いっぱいいっぱいいる。それでも、私はあんたのことが好きだったの。ただ、私が好きだったのはカッコいいあんたよ。今の醜いあんたのことなんか嫌い、別れてあげる。綺麗さっぱり忘れてあげる」
これでいいんだ。濃は俺から解放され、俺は光秀と結ばれる。これでいい筈なのに、俺も濃も涙が止まらなかった。なんで、なんでなんだろう。
俺は光秀のことが好き。それは絶対的な事実。でもそれが、濃のことを苦しめていると思うと。




