勝利の確信へ 壱
「信長、お前の彼女は儂のを見たいらしい」
この猿、何を言っているのだろうか。死にたいのだろうか、それとも死にたいのだろうか。
「キタナイ。カクシテよ、キモチワルい」
今この場所に俺の彼女はいない。それと、光秀の意見に共感。汚い。死ね、気持ち悪い。
「キコエテル? フザけるのもイイカゲンに」
光秀が猿に斬り掛かろうとしていた。それを俺が止める。
「待て」
肩を掴み、小声で囁いた。ここで殺しちゃいけない。殺したらいけない。
「安心して。切るだけダカラ」
光秀のその言葉を聞いて、俺は頷いた。切るだけなら別に構わない。
「イイカゲンにシテよ」
その言葉と同時に、猿の全身から血が噴き出す。いや、実際に血が見えた訳ではないんだが。ゲーム上、そこまでの演出はしていないからさ。
「ねえ、イタイ? イタイでしょ? 嘆いていいよ。命乞いをすれば、タスケテアゲルかもしれないよ。ほら、ほらっ」
興奮する光秀。壊れた、というよりも戻った。光秀は元々、甚振って遊んだりするような奴だった。決して、悪い奴と言う訳ではないんだ。優しいし、困っている人がいれば助けてあげる。でも、人を苦しめたりするのが大好きだった。
困っている人は助ける。苦しんでる人は、見てニヤニヤ笑っている。そんなような奴だった。最近は、周りを気にしてか大人しかったけどな。
「はは、何を言っているんだ。儂がこの程度だとでも? これだから若者は、浅はかで困るわっ」
なぜこいつはまだ笑っていられるのだろう。一度殺せばいいのだろうか。しかし、殺すのは少し……。むしろ、こいつは殺されるのを望んでいるような感じもするし。
「五月蝿い。ボク、五月蝿いヒトキライ。殺したくなってクルから……」
どうすればいいんだろう。何をすれば、猿を絶望させることが出来るのか。恥じらいという感情を持ち合わせていないらしいし……。
「お兄ちゃん、怪しい人を捕まえたよ。光秀君、見覚えあるでしょ」
この声は市か? 驚いて振り向く。そこにいたのは市と長政と勝家、それと知らない男であった。その男は、勝家により身動きも取れない状態。
「コノヒトだ。コノヒトが、ホントウのテキはトカ……。ソンなコトをボクに言って来たんだ」
例のあいつか。素直で寂しがり屋な光秀を唆した張本人。すぐに処罰すべき、その辺のごみクズの足元にも及ばない存在。恨まれているから、存在価値のない奴らとは少し違うかもしれないが。
「だが、苦しませるべきなのは猿だけさ」




