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恋の罠  作者: 桜井雛乃
最後の戦い
71/81

勝利の確信へ 壱

「信長、お前の彼女は儂のを見たいらしい」

 この猿、何を言っているのだろうか。死にたいのだろうか、それとも死にたいのだろうか。

「キタナイ。カクシテよ、キモチワルい」

 今この場所に俺の彼女はいない。それと、光秀の意見に共感。汚い。死ね、気持ち悪い。

「キコエテル? フザけるのもイイカゲンに」

 光秀が猿に斬り掛かろうとしていた。それを俺が止める。

「待て」

 肩を掴み、小声で囁いた。ここで殺しちゃいけない。殺したらいけない。

「安心して。切るだけダカラ」

 光秀のその言葉を聞いて、俺は頷いた。切るだけなら別に構わない。

「イイカゲンにシテよ」

 その言葉と同時に、猿の全身から血が噴き出す。いや、実際に血が見えた訳ではないんだが。ゲーム上、そこまでの演出はしていないからさ。

「ねえ、イタイ? イタイでしょ? 嘆いていいよ。命乞いをすれば、タスケテアゲルかもしれないよ。ほら、ほらっ」

 興奮する光秀。壊れた、というよりも戻った。光秀は元々、甚振って遊んだりするような奴だった。決して、悪い奴と言う訳ではないんだ。優しいし、困っている人がいれば助けてあげる。でも、人を苦しめたりするのが大好きだった。

 困っている人は助ける。苦しんでる人は、見てニヤニヤ笑っている。そんなような奴だった。最近は、周りを気にしてか大人しかったけどな。

「はは、何を言っているんだ。儂がこの程度だとでも? これだから若者は、浅はかで困るわっ」

 なぜこいつはまだ笑っていられるのだろう。一度殺せばいいのだろうか。しかし、殺すのは少し……。むしろ、こいつは殺されるのを望んでいるような感じもするし。

「五月蝿い。ボク、五月蝿いヒトキライ。殺したくなってクルから……」

 どうすればいいんだろう。何をすれば、猿を絶望させることが出来るのか。恥じらいという感情を持ち合わせていないらしいし……。

「お兄ちゃん、怪しい人を捕まえたよ。光秀君、見覚えあるでしょ」

 この声は市か? 驚いて振り向く。そこにいたのは市と長政と勝家、それと知らない男であった。その男は、勝家により身動きも取れない状態。

「コノヒトだ。コノヒトが、ホントウのテキはトカ……。ソンなコトをボクに言って来たんだ」

 例のあいつか。素直で寂しがり屋な光秀を唆した張本人。すぐに処罰すべき、その辺のごみクズの足元にも及ばない存在。恨まれているから、存在価値のない奴らとは少し違うかもしれないが。

「だが、苦しませるべきなのは猿だけさ」

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