覚悟を秘めて 弐
具体的な方法は分からない。ただ、精神的に痛み付けてやった方がいいかな? とは、俺も考えている。
「ソウだね」
あいつを殺すことで、光秀を汚すことはしたくない。今は怒りに燃えているけど、こいつの瞳は純粋で綺麗で……だから。汚したりはしたくない。
「着いて来てね?」
その言葉に頷くと、光秀は走り出してしまう。慌てて冷静に俺も着いていく。本当にそこに罠らしきものは仕掛けられていた。その先の道は、様々な罠がどこからも。
しかしそれを光秀は全て斬り捨てる。どんな罠も策も関係ない。光秀は全てを斬り捨てた。容赦なく、狂ったような瞳で。
「こんにちは~。ひ~でよ~しくん☆」
恐ろしい笑みを浮かべる光秀。かなり不気味な笑顔だったが、俺の方を向くときだけは優しく笑ってくれる。可愛らしく笑ってくれる。
「な、なっ? ど、どど、どうし、て……」
期待以上に驚いてくれる猿野郎。しかしあまりにも驚いていた為、逆に少し怪しかった。油断は出来ないよな。
「どうしてって、決まってるでしょ? キミをコロすタメさ」
表情を俺に見せないようにか、光秀は猿の方を向き続けていた。それを正面から見ている猿の表情は、恐ろしさに歪んでいる。とても演技だとは思えないほどの表情をしていた。
しかし、元々猿はそんな奴だった。だからこそ、絶対に油断することは許されない。ずっと疑い続けることが大事に決まっている。猿はそんな奴なんだから。
「は、ははは。お前らじゃ儂を殺すことは出来ない。残念だったな」
恐怖に歪んでいた顔が、一気に笑顔に変わった。確かに昔から猿は表情豊かな野郎だった。それ自体が演技である可能性も捨て切れないから、疑いはするけど。
「ナンデ? 調子に乗らないでよ」
いつも怖がっている光秀に、恐れるような様子は全くなかった。ちらっと見えた光秀の顔は、自信に満ち溢れた不気味な笑顔をしている。
「サルゴトキが、ノブナガサマに勝てるとオモってイルのか? ……バーカ」
その低い声は、光秀の口から出たものとは思えない。その言葉は、光秀の口から出たものとは思えなかった。
「信長の方も何か言ったらどうか? それとも、そっちはガタブルかな」
俺? いきなり振られて驚いてしまった。しかし俺だって、そんな筈はない。
「誰がお前なんて。調子に乗ってても、お前は所詮猿なんだ。バカバカバーカ! いい気になってるんじゃねぇよ、猿」
決して俺達は有利な状況ではない。二人で、敵陣のど真ん中にいるのだから。




