復讐への誓い 参
「光秀さんは裏切ってない? じゃあ、これは嘘だったのですね」
蘭丸は手紙を取り出した。そこには、光秀が反乱の準備をしていると記されていた。そしてそれを送ったのは猿らしい。秀吉と書かれている。文字もそうだ。
「秀吉さんの文字だとは思いますが、どーして自分の名を書くのでしょう」
蘭丸は不思議そうに首を傾げる。秀吉の文字は一目で分かる。とても字が丁寧で上手なのだ。この字を他の人で真似することは出来ないね。勿論俺だって無理だ。
「手柄でしょ? ボクがノブナガを斃すと信じて疑わなかったんだろうね」
まあこれで、更なる証拠が出来たな。本人が認めているんだから、今更証拠はいらないかもしれないけど。しかしどうしてあの猿が、不思議でならない。
「でも良かったです。光秀さんが信長さんを裏切ってないって分かって」
嬉しそうに微笑む蘭丸を、光秀が頭撫でていた。二人は微笑ましい光景だが、そんな穏やかな状況ではない。負けないとは思うが、何するか分からないし。
「どうなさったのですか? 何があったので御座いますか、……信長さん」
今度は誰だろう。扉を開けると、そこには家康が心配そうに立っていた。
「失礼致します。信長さん、何があったのかご説明頂けないでしょうか」
静かに入って来て、家康は少し離れたところに正座した。情報は隠そうと頑張っているのだが、家康のところまで漏れてしまったか。早く片付けなければだな。
「僕の元に秀吉さんがいらして、信長さんを倒さないかと仰ったのです。報酬なども丁寧にご説明して下さいました。しかし、断ってここに参ったので御座います」
クソ猿め。初期プレイヤーの頃から家康とは一緒にいる。その家康が俺を倒すのに協力する筈がない。報酬なんかで釣れる筈がないじゃないか、バカなのか。
「秀吉はお兄ちゃんを裏切った。そして光秀君のことを傷付けた」
怒りを込めた瞳で、市はそう説明した。長政は怒りを宥めるように背中を撫でてあげている。




