復讐への誓い 弐
あの猿はどう見ても市に惚れている。だから、揺さ振りを掛けれると思うんだ。ただ、出来る限り妹を利用するような真似はしたくない。
それに、長政以外に市が? そんな可哀想なこと、させたくないね。市の長政に惚れっぷりは半端じゃないから。そして隣で見ている長政も嫌だろうし。
「モチロンだよ。ボクは最強、ボクはノブナガのタメに戦うんだ」
頷く光秀は、普段からは考えられない程真面目な表情をしていた。無邪気な笑顔の面影はなく、恐ろしく微笑んでいる。本当は俺も、光秀にこんな顔させたくない。本当は俺も、光秀に笑顔でいて欲しい。
しかし、猿のことは絶対に許せないから。絶対に許してはいけない、そう思うから。だから、一旦光秀には武器を持って貰うんだ。
「信長、さん? どーしてですか。光秀さんは信長さんを裏切ったのです。それなのに、どーしてですか」
扉が開けられ、後ろから声が聞こえて来た。驚いて振り向くと、そこにはボロボロになった蘭丸が。
「蘭丸! 生きていたんだな。良かった、大丈夫か? 取り敢えず回復しよう」
良かった、生きててくれて。蘭丸を殺してしまった、そう言って光秀は泣き掛けていた。しかし、蘭丸は生きていてくれたんだ。
「ランマル、ゴメンネ? ボクのセイで、コンなにボロボロになっちゃって。スグ治してアゲルから」
嬉しそうに駆け寄って行った光秀は、一瞬でその傷を癒してやった。さすがは光秀、傷の手当だってお手の物だな。やっぱり、俺にとっては光秀が一番なんだ。
「説明して下さい。光秀さんは信長さんを裏切った、そーでしょう? ならどーして、どうしてここで話なんてしているんですか。何があったのですか」
礼をして部屋に入って来ると、蘭丸は俺の隣に座り問い掛ける。
「光秀は裏切ってなんかない。真の裏切り者を倒すべく、ここで作戦会議と言ったところだ。蘭丸も協力してくれないかな」
確かに光秀には及ばないが、蘭丸だってかなり強い。その力は欲しいと思う。




