失われた忠義 弐
「光秀、許さない」
儂はそう言った。儂はそう聞かせた。
「そうだ。許さない!」
儂に続けて、皆もそう言い始めた。
「疲れたかもしれないが、走り続けよう。光秀を、儂の手で倒してやる為に」
一旦休んだが、もう終わりだ。走り続けなければいけない。明智光秀、絶対殺す。殺す殺す殺す殺す。
「そろそろ休むか」
体力が減っている。このままでは、道端で死んでしまう。定期的に休養を取らなければならない。このゲームのリアルなところに腹立つ。
「食事を用意してくれ」
近くの茶店に寄った。金は十分にあるし、全員分振る舞ってやろう。もし腹を空かせていて、力が出なかったらどうしよう。光秀を倒せないかもしれない。それは何があっても避けたいことだから……。
「え、えと」
早く食事を出して欲しいのだが、店員が戸惑ってしまっている。こんなところにも、リアルな設定を付けてしまわれて迷惑な。確かに一応儂は少し偉めの人、信長様のおかげでそうなれた。だから、戸惑う気持ちだって分からないではない。しかし、そんな設定を付ける必要はないと思うんだ。
「ど、どうぞ。お召し上がりに……」
そんな言葉を聞く気はないので、取り敢えずおにぎりを受け取った。
「ありがとう。必ず礼はする」
しかし、今はそんなことをしている場合じゃない。後で儂が天下を取った時、それでいいだろう。そう思い儂の部隊は食べながらも走り出したのだ。




