失われた忠義 壱
「信長様がお亡くなりになられた? 明智殿が謀反を……」
手紙を読み、儂はつい口に出してしまった。
「この戦いは切り上げて、すぐに戻ろうじゃないか。信長様が殺されたらしい。すぐに仇を取ってやろう」
戦争中だったが、信長様が死んだのなら関係ない。途中で放置してきたって、誰にも怒られはしまい。このタイミングでわざわざここを守り続ける必要などない。だって、それよりも優先すべきことが出来たのだから。
「信長様が?」「嘘だろ?」「信じられない」
そんな声が上がる。でもまあ、そりゃそうだと思う。普通にしていたら、信長様が死んだなんて信じられないだろう。
「仇を取りたい。その想いは皆同じだろう? 何よりも今すべきこと、分かるよな? 撤退させろ」
前線で戦ってる部隊にも引き返させた。急がないと。明智光秀は儂が斃すんだ。他の誰にも殺させはしない。儂が討ち取り、この儂が信長様の後を継ぐんだ。
「急いで戻るぞ? 本気で走れ」
用意などせず、そのまま儂は馬を走らせた。何も持たず、ただ速さだけを求めた。急がないと、誰かに先を超されてしまうから。それを恐れて、ただ走ることだけに全てを費やした。そして時間が無くなると、忘れずセーブをした。折角急いだのに、明日にはそれが無くなってるんじゃ堪らない。




