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金ヶ崎の退き口 参
「どうもしないよ、心配しないで。茶々、初、あっちで遊んでいなさい」
長政様は優しくそう言って、二人の頭を撫でてあげた。
「「はい」」
二人は嬉しそうに笑って、揃って返事をすると走り去っていった。
「あたしは浅井家に嫁いだんだから、もし戦争になったらお兄ちゃんとだって戦うよ。でもやっぱり、そんなことになって欲しくはない……」
お兄ちゃんと長政様でどっちを選ぶかで言ったら、当然あたしは長政様を選ぶ。どんなに浅井家がピンチになったって、あたしは長政様のことを信じ続けるんだからっ。
「何があったって、それを阻止して見せよう。市の為、茶々と初の為に……」
そう言った長政様は、いつも以上にカッコ良く見えた。
「ありがとう。でも長政様、無理はしないでね? お義父さんとも仲良く、だからね。…………長政様、怖いよ」
でも長政様が大反対でもしてお父さんと戦う、ってことにでもなったら今のあたしと変わんないもんね。家族で戦うなんてことは、よくないことに決まってる。




