Cパート コウ視点
今日は小百合ちゃんの入学式。
あたしはあるお店を探して、商店街を彷徨い歩いていた。
転校して来て、まだ日も浅いし、土地勘もない、スマホを見ながら移動した。
それから、歩いて、立ち止まって、確認して、見つけたのが「松風堂」
駄菓子屋さんだ。
十円や二十円で買える駄菓子を売っているお店で、大河高校や大河付属中学校から近い所にある。
店内にはお菓子や学校で使う文房具も置いてある。
あたしは、マンガ本や雑誌が置いてある棚に行き、ある雑誌を見つけた。
「大河キラリ★~青春の特集号~VOLUME1」
と、書かれていた。
あたしはそれに手を伸ばして、この松風堂の店主であるおばあちゃんにその雑誌を見せた。
「それは、3000円だよ」
「はいっ」
内心高いぁと思いながらも、お財布から三枚の千円札を出した。
そして、ガチャガチャが置いてある所へ行き、一つのガチャに目を止めた。
それは、「ヒストリー恋絵巻お助けアイテム☆」
思わず、ガン見して目を疑った。
そう値段に。
一回、5000円
もう一度、確認して
一回、5000円
信じられない。
ガチャガチャに5000円もかかるなんて。
でも、あたしはそのお助けアイテム☆が気になって、気になって、しょうがなかった。
あたしの初期費用が1万円で次のお小遣いが次の月で3000円、一回のガチャ5000円がどれ程痛いか分かっていた、それでも、あたしはそのガチャに賭けたのだった。
五千円札を入れて、ガチャを回す。
ガシャン。という音と共に、何やら、赤い布切れが出てきた。
値札にはこう書かれていた。
「変身マスク」これを被れば、どこでもいつでも変身できます。
あなただとは決してバレません。安心してご利用下さい。
あたしは、その布切れをばしっと投げ捨てた。
5000円も賭けて当てたのがこれか!
でも、もったいないので拾ってホコリをはらって持ち帰ることにした。
残りのお小遣いは2000円、どうしよう。
こんなに使っちゃった。
あたしは、頭を悩ませながら、家路に着いたのだった。
そして、入学式であった事を小百合ちゃんが話してくれた。
「それがね、政宗様が格好良くて素敵で素晴らしかったの~」
おもに伊達政宗が新入生代表の挨拶をして、情報屋の猿飛佐助に会ったらしい。
「それで、小百合ちゃん、肝心の生徒会長は?」
「あ、そう言えば、居たわね……?」
あたしはがっくりした。
何しろ、あたしは信長様ファンなのだ。
直にお姿を拝見して、声を聞きたい。
「それからね、コウちゃん。この世界、乙女ゲームだけじゃなくてギャルゲームの世界でもあるの」
「それ、どういうこと?」
「源紫って知ってる?」
「うん、知ってる、ヒストリー恋絵巻の攻略対象でしょう。確かお兄ちゃんがやっていた」
「そう、私、さだこちゃんを見つけたの。すっごく可愛いくて綺麗でね……、それで私、気付いちゃったの。彼女こそがヒロインだって」
「小百合ちゃん……。あっそうだ、あたし、松風堂で雑誌とね……これ、当てたの…」
あたしは「大河キラリ★~青春の特集号~VOLUME1」と「変身マスク」を小百合ちゃんに見せた。
「へー大河キラリ★に星座占いが書いてある、何なに~かに座のあなた、新たな運命を受け入れなければならなくなった。そこはビビっと!きた部活に入ることをお勧めします。そこではあなたを導いて強くなることでしょう」
あたしと小百合ちゃんは同じかに座だ。
「部活がキーワードみたいだね。ヒストリー恋絵巻をプレイした時も大河キラリ★はすごく役に立ったし、部活入った方がいいみたいだね」
「うん、そうだね。コウちゃん。それより、この変身マスク面白いね。これ貰ってもいい?」
「いいよ、小百合ちゃん、そんなんでも良ければ…」
こうして、「変身マスク」は小百合ちゃんの手に渡った。
まさか、その変身マスクが大いに活躍するなんて、この時のあたしは思ってもみなかったのだった。