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Bパート 小百合視点

 「ねえ、お母さん。思い出しちゃった。あたし……」


 娘のコウは学ランを着てへなへなと座り込んだ。


 私はというと、40歳のいい年をして、何で制服を着ているのだろうかと思った。


 「ねえ、コウちゃん。私って今いくつに見える」


 「うーと、高校生くらい」


 手で自分の頬を触る。


 柔らかくてきめ細かい、十代の肌だ。


 「もしかして、若返ってる?」


 「うん、お母さん。若返ってるよ」


 私は心の中でガッツポーズを取った。


 「ねえ、コウちゃん。私のことはお母さん。じゃなくて小百合ちゃんって呼んで」


 「うん…分かった」


 娘にうむを言わせぬよう、圧力をかけた。


 「それじゃあ、コウちゃん。どうして、学ランを着ているの?セーラー服の間違いじゃないの」


 「そうなんだけど…、間違って届いたみたい」


 「そっか、パパとママに聞いてみようか」


 「うん、そうだね」


 私とコウちゃんは居間へと降りて両親にコウちゃんのことを聞いてみるのだった。


 すると、ママが電話で学校に確認の電話をすると、何と性別の欄に男の子と丸がされていたのである。


 両親が間違えて書類を書いてしまったのだ。


 「コウちゃん、ごめんなさい。ママが間違えて書いちゃったばっかりに……」


 ママは心から申し訳なさそうにコウちゃんの謝った。


 「うん、いいよ。ママ、忙しかったんだもん。でも、どうしよう。明後日から学校があるのに……」


 「学校の方にはしばらくその格好で行ってもらうことになるわ、本当にごめんなさい」


 「分かった」


 そして、私とコウちゃんは私の部屋に入って、これからのことを話すことにした。


 「ねえ、小百合ちゃん。小百合ちゃんはどこの高校に行くんだっけ?」


 「えーとね、たしかパンフレットがあったはず…」


 私は机の上に置いてあった、学校のパンフレットを持ってコウちゃんと見た。


 「「……」」


 これって、まさか!


 私は高校の名前を目にして、あるゲームのタイトルを思い出した。


 「ヒストリー恋絵巻」


 歴史の人物と恋愛を楽しむ乙女ゲーム。


 その舞台となる高校の名前が「大河高等学校」


 「小百合ちゃん、これってゲームに登場する高校の名前だよね」


 「うん、そうだね。コウちゃん」



 「……」


 「……」



 「確か主人公の名字って花咲だったよね」


 「うん」


 「あたしん家も花咲だよね」


 「……うん、もしかしたら、私達、乙女ゲームの世界にトリップしちゃったのかもしれないわね」


 「さ、小百合ちゃん……」


 「コウちゃん、明日、私、入学式で確認してみるわ」


 この目で、確認しなければならない。


 この世界を。

 




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