入学式の前日の朝
Aパート
「お兄ちゃん。このゲームって三種類のエンディングがあるんだってね」
「ああ、ノーマルエンドとハッピーエンドと心中するデスエンドがあるんだ」
「お兄ちゃんは誰がお気に入り、やっぱり……」
夢から目が覚めた。
懐かしい夢を見ていた気がする。
俺はカーテンを開け、太陽の光が差し込み、朝だと確認する。
目ざまし時計を見ると時間が7時5分前、目覚ましが鳴る前に起きた。
俺はパジャマから服に着替えて、一階へ降りて、ダイニングルームに入った。
「おはよう」
「「おはよう」」
父さんと母さんがいた。
父さんはテーブルのある椅子に座って新聞を読んで、母さんはキッチンで朝ご飯を作っている。
「光、もう少しで朝ご飯ができるから、紫起こしてきてちょうだい」
母さんはそう言って、俺は妹の紫を起こしに再び二階に行って妹の部屋の前に立った。
妹の紫とは血が繋がった兄妹じゃない。親の再婚で兄妹になった義理の妹だ。
妹を起こしに行くのに、すごく疲れる。
とりあえず、扉を叩いで声をかける。
まずそれで、声が返ってきた試しがない。
それから、扉を開けて、紫の部屋へ入る。
ピンクの壁紙にくまやうさぎのぬいぐるみが置いて飾ってある。女の子らしい部屋だ。
ベットで寝ている紫に近づく、そして声をかける。
「紫、朝だぞ。起きろ」
「…う…んっ…まだ、…ねる……」
「ほら、起きろ」
俺は紫に近づき肩を揺さぶった。
そして、紫はぱちりと目を開けて俺の首に手を巻きつけてきた。
「お兄ちゃんも、一緒にねーよ」
「おい、こら、ゆ、かり」
俺は紫に絡みつかれてベットへ倒れ込む。
女の子の柔らかい体が俺に密着して、俺は焦る。特に胸の部分が。
紫の手を握って紫から離れる。
「いつも、俺をからかって、いいから早く起きなさい!」
「はーい」
いつものことながら、俺が紫を起こしに行くとこうなる。
最近、特に紫から俺のスキンシップが多くて困る。
前は、もっと暴力的だった様な気がする……。
妹ってこんなんだっけ?
俺は今と過去を思い出そうとしたが、靄がかかって思い出せなかった。
Bパート
鏡の前に立ってくるんと回る。スカートがふわりと揺れ、ひざのちょっと見える。
制服を着た自分の姿を確認して、明日の入学式のことを思い起こす。
ああ、いよいよ心待ちに待った高校生活が始まる。
私は家族にも見てもらいたくて、居間へと移動した。
「素敵だよ。小百合もいよいよ、明日から高校生か」
パパが言って、ママが微笑む。
急な転勤で引っ越さなくてはならなくなって、急きょ、進路変更をした高校。
住み慣れた場所を離れて暮らすことに不安はあったけど、新しい高校での生活も楽しみだった。
私は嬉しくなって自慢しに妹のコウの部屋へと入った。
その時まで私は「十五歳の花咲小百合」だった。
Cパート
パパの仕事の転勤で急に転校することとなった、あたし、花咲コウ。中学2年生。
明後日から始まる学校の制服を試着してみようと段ボールから出したところ、思ってもみない服が出てきたのだ。
学ランだ。
黒い生地に詰襟の学ラン。
間違いかと思って試しに着てみた。
サイズがぴったりだった。
そんなところに姉の小百合が入ってきたのだ。
「コウちゃーん。見てー、私の新しい制服。可愛いでしょう」
姉と視線が合い、あたしは、記憶がよみがえった。
「おねえ……お母さん?」
あたしはよみがえった記憶で姉である小百合は母であることを思い出したのだ。
そして、お母さんはそんな私に目をぱちくりさせて、
「コウちゃん……。私、山田小百合よね……」
そう言って、あたしはうん、そうだよ。と言った。
そして、あたし達は最後の記憶を思い出して、話合った。






