あゆミ。
いつものバス停にて――
「焼肉冬の時代に『きんぐ』が大躍進?」
月夜がグルメ系アプリの中にあった、そんな記事を読んでいた。
「冬の時代? 焼肉ってコロナ禍でも店内は常に換気されてるからウィルスも蔓延しなくって、おいしくって、最高の食事方法だって世界保健機構もいってなかったっけ?」
「いってないとおもう……」
隣でそんな事をいうイブキ。
「焼肉の煙と匂いがすっごいモンね。おいし〜し格テ〜ブルに換気用ダクトがついてて、清潔で綺麗でおいし〜――チェ〜ン店はそんな感じよね〜」
「個人経営で昔ながらのトコロは煙い店内に薄暗くて、おいし〜ってのもあるわよね〜――そ〜ゆ〜ところは換気も行き届いてないから、コロナ的にはマズイけど、味はおいし〜わよね」
「そんな焼肉が冬の時代?」
「ここまでがマエフリっ⁉︎」
「二〇二四年の焼肉屋倒産件数は五〇店舗……そんな数なの? 焼肉屋なんって牛丼屋ほどじゃないケド、全国に数億店舗あるじゃない」
桁を盛る月夜。
「そんなのないよっ!」
「その中の五〇店舗なら、単に淘汰されただけなんじゃ……近くにもっと安くておいし〜ところできたら焼肉屋も閉店するわよね」
「焼肉も競争社会だからしょうがないわよっ!」
「『きんぐ』のヤクシンは?」
ぜんぜん前に進まない月夜だった。




