あくび。
いつものバス停にて――
「ふぁ〜」
イブキが片手を挙げ、大口でアクビをする。もう一方の手は口に当て隠そうとしているが、手ちっちゃくてあまり隠れていない。
「う〜……むにゃむにゃ……」
アクビのさいにでてしまった涙をコシコシと拭っていると――
「月夜⁉︎ みてたのっ⁉︎」
一部始終をバッチリ見ていた月夜に気づくと慌てて正す。
「な〜に〜?」
「いや、すっごい演技力だなって」
「エンギ?」
月夜言葉に小首を傾げるイブキ。
「ほら、あまりにもこのままだったから、ついいつものモテるための仕草だと思って……」
そう言って月夜が掲げたスマホ画面には、
「『カワイイあくびのシカタ』? ちょっとかして――ふむふむ……」
記事を読み進めていくと、さきほどイブキがした仕草のまんまが男ウケすると書かれていた。
「おぉ! じゃ、イブキさんモテんじゃん! よぉ〜し、このままずっとネブソクつづけるよぉ〜」
「――の前に」
月夜がカバンから櫛と化粧品を取り出すと、
「髪ボサボサでクマがあったら男性も逃げちゃぞ」
そう言いながら櫛でイブキの髪梳かし、ファンで目元クマを隠してあげるのだった。




