2004BL86
いつものバス停にて――?
「イブキ」
いつもと違う様子の月夜。
「どったの⁉︎ なんでセ〜フクきてないの? ガッコウにおくれちゃうよ」
月夜はいつもの制服姿ではなく弓道着に胸当てを着け、長大な和弓を持ち、素足のままの姿だった。
「見て」
そういって月夜は空を指す。
「ん?」
イブキは言われるままにそちらを向くと、太陽の輝きに負けない輝きを放つ光が軌跡を残しながら――さながら昼間の流れ星のような光景に、
「なにあれ⁉︎」
「あれは2004BL86と呼ばれている隕石よ。26日に地球に最接近――いえ、もうすぐ地球に衝突する」
「えっ!」
「大丈夫。ウチがそんな事には――」
月夜は長大な弓を構え。
「させない!」
空の輝く星に向かって矢を放つ!
しかし放たれた矢は紅い光に包まれると消失してしまう。
「くっ! 魔王ペタジ〜二めっ!」
「マオ〜⁉︎ むかしのヤキュ〜せんしゅじゃなっくって⁉︎」
「それよりも救星の矢が……」
月夜が口惜しそうに歯噛みする。
「こ〜なったらウチらで直接止めるしかないわ! 行きましょイブキ」
月夜に手を取られると一瞬のうちに星空の中に放り出される!
「へ? なになに? ど〜なってんのっ⁉︎」
「見て」
月夜の指す先には太陽の光を浴び灼熱に輝く岩塊。
「直径500メートルの隕石――いえ、もう小惑星といったほうがいい大きさネ」
月夜がいつもと変わら口調で言う。
「ど〜するの?」
「たかが石コロひとつウチが軌道を変えてみせる」
やたら男っ前な表情で言い切り――
「JKはダテじゃない‼︎」
そう言い残すと一筋の閃光となって岩塊へと向かう。
チュンチュンチュン――バタバタバタ――
スズメの声を聞きながら目を覚ましてイブキは――
「……さすがにこれはユメだとおもったよ」
小惑星2004BL86本日最接近です。




