ドジっこ。
今日も今日とていつものバス停――
「月夜。世の中には『偶発的に掴む幸運』(セレンディピティ)というモノがあるの知ってる?」
「…………」
「古くはペニシリン。最近ではHydroやTitanという熱硬化性ポリマー、これは強靭で自己修復機能まである新素材でパワードスーツの設定で使えるな~っておとーさんが言ってた。この素材ね、普通のプラスチックポリマーを作る途中でドジっこが材料を入れ忘れたために発見されたんだよ!」
「……イブキ」
月夜はそっとイブキの肩に手を置くと、
「その主張だけで――」
「学生カバンとゲームキューブを間違えて持ってきた事を正当化するには無理がある」
「な、なんでよ! げ、ゲームキューブあればなんだってできるモン!」
「むしろ、ソフトもコントローラーも接続コードさえないゲームキューブじゃ、なんにもできないと思うが……」
「で、できるモン! ゲーマーが選ぶ『この世にゾンビがあふれたときに手に取る物』ランキング1位なんだよゲームキューブ!」
キンコーン! (そんなランキングありませんbyググレカス先生)
「それにしても何故ゲームキューブとカバン間違える!? さすがにドジっこでもやらないレベル」
「この取っ手のせいだよ! 据え置き(コンシューマー)なのにこの手に妙になじむこの取っ手のせいでカバンと間違えちゃったの!
「わかった。わかったから。さっさとカバン取ってきな。さすがにドジっこの重要性を説いても先生は許してくれないと思うし……」
「……うん。わかった」
トボトボと家に向かって歩き出すイブキ。
「最初から素直に取り行けばいいのに……」