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あきかたなうお。
いつものバス停にて――
「ねぇ、月夜」
「ん〜?」
月夜は頬に貼られデッカい湿布を触りながら――
「――って、ど〜したの⁉︎ それ」
イブキが月夜の頬指して。
「う〜ん……昨日部活でちょっと失敗しちゃって……でも、少し弓弦が掠めただけだから」
「い、いたいの?」
「酷いのになると耳がなくなったりするから、それに比べれば、まあ、それよりなんだったの?」
「あ! あなのね、あのね――」
「アキガタナウオってなに?」
「へ?」
「だから、アキガタナウオだよ。これこれ」
そういってイブキがスマホ画面を見せる。
「これはサンマね」
「あぁ……そうなんだ……もっと、こう――クジラの『一角』っぽいのソ〜ゾ〜してたのに……」
なにか物凄い存在を想像して空振ったイブキをみて月夜がフォローする。
「でも、ほらサンマおいし〜じゃん。秋のおいしい物だよ」
「イブキさんあのニガミとホネいっぱいなのはど〜もすきになれないんだよね……」
「へぇ〜そういえばイブキ嫌いな食べ物はじめ聞いたかも」
「そだっけ?」
「うん」
味覚の秋も人それぞれだな〜と感じた月夜だった。




