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二霊二拍手!~昇天巫女様とゆかいな下僕-アコースティックVER.-~  作者: にゃん翁
第一話 少女霊椅譚(しょうじょれいいたん)
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「ヒヨリ、ずりーぞ!」

「てめー」

「この裏切り者ぉ!」


 志村たちは放課後の帰りの会にまでつるし上げられ、クラス全員のまえで「もうしません」と半泣きになりながら証文まで書かされていた。

 いまだにクラスの女子からの視線が痛い。


「まぁまぁ」

「パン買うのにどれだけかかけてんだよ! おかげで昼飯まで食えなかったじゃんか」

「悪ィ悪ィ」


 昼食食えなかったのは別の要因だったと思うが、と日和は手を突きだし半笑いする。

 日和はパンと一緒に委員長から返してもらった『スランプ』を差し出す。


「おまえこれどこから!?」


 おおげさにおどろく友人たちに、日和は「うーん……」とうなった。

 つき刺さるような視線を感じる。


「拾った」

「拾ったって、委員長のやつ、捨てやがったのか?」

「おれたちに散々頭下げさせて自分のほうがワルモノじゃねぇか!」

「奴は鬼だ!」


 ぎゃーすか騒ぐ友人たちから目をはなし、委員長の席を見ると、しっかり目が合う。

 つん、と視線をそらし、委員長は帰り支度を済ませると、誰よりも早く帰っていく。


「態度悪いやつ」

「なぁ、ヒヨリ、ホントに捨ててあったのか?」


 たずねてくる志村に、日和は半分だけ真実を告げる。


「返してくれたんだよ。委員長が」

「マジで!?」

「ああ、マジで」

「「嘘つき!」」

「なんだよ!」


 全員から押しつけられた指を一つ一つ払い落とし、日和は憮然ぶぜんと腕を組む。


「オレだっていろいろ考えたんだぞ!」

「素直に返してくれたんならわざわざウソつくことねーじゃねえか」

「それには……具体的に言えない理由があるんだよ」


 なんとなくだが、委員長の前で本当のことを言うのはためらわれた。


「朝の仕返しか?」

「ヒヨリって案外ねちっこいのな」

「そんなんじゃねえよ」

「ああ、でもよーオレのみっちーは戻ってこねえ」


 志村が表紙を開くと、不思議な顔をした。


「どうした?」

「これ、おまえの仕業か?」


 破けた”みっちー”の巻頭カラーが、セロテープでつぎはぎされていた。

 委員長が返してくれてから今まで、日和は中身を読んではいない。だとすれば、考えられる要素は一つしかなかった。


「手間かけてくれたのは嬉しいけどよ、これじゃコレクションには加えられねえよ」


 あいつ、思ったよりいい奴じゃん。

 日和はすこしだけ委員長を見直し、「じゃ、オレがもらうよ」と言った。

 にょきりと手のひらが伸びてきた。


「200円」

「はい?」

「まだ読んでないんだろ? おれはコイツをおまえに売って軍資金にしたいんだ。友情のために買ってくれるよな?」

「……せめて半額に負けろ」

「いやだ。『スランプ』に足りねえじゃん」


 しぶしぶ残り少ないこづかいのなかから硬貨2枚を取りだし、志村の手のひらに押しつけた。


「まいどー」

「あほか」


 つぎはぎだらけの『スランプ』を手に取ると、日和は学生鞄のなかにつっこんだ。


「おつとめがんばれよー!」


 笑いあう友人たちの声を背に、帰宅部の日和は彼個人だけの部活動の場所へ急いだ。


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