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二霊二拍手!~昇天巫女様とゆかいな下僕-アコースティックVER.-~  作者: にゃん翁
第二話 狂犬騒乱(きょうけんそうらん)
32/86

/13/

「――今朝午前5:00頃。弓杜町爪堀つめぼり区で、地元高校生3人の遺体が歩道橋に串刺しにされているのを、とおりかかった軽トラックの運転手が発見し、警察に通報しました。3人は学校も欠席気味で授業にも顔をだすことはすくなく、バイクが趣味で知り合った数名のしりあいと深夜の暴走行為をくり返しており、警察は暴力団とのからみもふくめた捜索を――」



「日和! 今朝のニュース見たか!?」


 声をかけられた日和は、心ここにあらずといった様子で御堂を見た。


「みてねーよ」

「新聞でもいいぜ! すげーぜ! 殺人事件だ!!」


 グループのなかでも最たる情報通の御堂は、いつも情報にえている。高校生ながらに深夜23:00から放送の「イレブンニュース

」は欠かさないし、起きたら3つほど購読している新聞をナナメ読みして情報をしいれてくる。

 御堂は興奮ぎみに日和のまえに新聞を置くと、一面記事をゆびさした。


「地元の珍走団のやつが殺されたってよ。それもすげぇムゲェ殺されかた! 残虐非道ざんぎゃくひどうにもほどがあるぜ!」


 正義感むきだしの言葉のようだが、うれしそうなその表情からかけらもそんなものは見いだせない。


「この記事やるよ! プリントしてきたからたくさんあるんだ!」


 ごていねいにプリントアウトまでしてくれたA3用紙に目を落とすが、頭のなかに入ってこない。彼は殺人事件よりも、友達のことのほうが心配だった。


「あっ、志村コレみろよコレ!」


 御堂は言いたいことだけ言うと、つぎの話し相手にうつっていった。どうやらグループ全員にくばるつもりらしい。

 日和はプリント用紙を適当にまるめると、ゴミ箱にむかってぽいと捨てた。

 見事に外れる。

 ま、いいかと思った。


「ちょっと春日くん!!」


 委員長がつかつかと歩いてくると、落ちたゴミを拾ってくれる。

 そしてわざわざ持ち主に返してくれた。


「……なにすんだよ」

「ゴミ箱にものを投げ入れない! ちゃんと捨ててよね!」

「むー。なんだよー。いいじゃんかー。疲れてるんだよー」

「まだ一時間目もはじまってないのになんで疲れるのよ!」

「……人間てのはな、生きてるだけで疲れるんだよ」


 日和としては真理をついたつもりだが、委員長には「はぁ?」といった顔をされた。


「ワケわかんないこと言ってないで捨てなさいよ。グータラ人間」

「……いーよオレ、グラタンで」

「なによーその態度ー!!」


 ガラリと教室の扉がひらく。


 教室にいる全員がぎょっとして目をいた。

 大沢木は扉を閉めると、自分の机に向かって歩き、座った。

 呆気にとられている一同のなかで、責任感のつよいクラス委員長がいち早く立ち直り、グータラ人間をほうりだして大沢木のもとへ駆けつける。


「大沢木くん!? どうしたの?」


 顔を向けられた委員長は、びくっ、と肩をふるわせ、硬直した。

 委員長につづき、春日も親友のもとに駆けつける。


「どうしたんだよそのカッコ!?」

「なんか用か?」


 彼の着ている服には、なまなましく乾いた血のあとが大量にはりついていた。それがニセモノでないことを証明するかのように、鼻の曲がるようなにおいが彼をとり巻いている。


「だ、大丈夫か? 昨日やつらにやられたケガか? 保健室に行こう!」

「うっせーな。邪魔をするなよ。せっかくサイコーの気分なのによ」


 するどい犬歯をむきだし、笑う表情には、どこか人間ばなれした気性きしょうを感じる。


「ぜんっぜん大丈夫そーじゃねーよ! イヤでも保健室つれてく! ほら、立てよ!」

「うぜんだよ」


 大沢木が腕をひゅんっ、とふると、離れている日和のほほに傷がついた。


「つっ!」


 まるで引っかかれたような線が三本、ほほから赤い血がたれる。


「……いや、ダメだ! 意地でもつれてく!」


 日和は昨日なにもできなかった自分に責任を感じていた。彼があばれだそうと、保健室で治療を受けさせることに決めた。


「けっ、わーかったよ」


 大沢木は立ち上がり、ドアへと向かう。日和は胸をなで下ろし、委員長の肩をたたいた。


「ついてきてくれよ、南雲」

「え、あ、うん、いいよ。別に」


 突然気づいたように、彼女は日和の言葉にうなずく。


「行こうぜ、いっちゃん――」


 彼が声をかけたそのとき、大沢木は廊下にある窓に足をかけていた。


「なっ! にっ」

「それじゃな、ひーちゃん」


 犬歯をだして笑いかけると、そのまま一気に外へとおどりでる。


「ここ三階だぞ!?」


 廊下にいた生徒たちが悲鳴をあげた。登校してくる生徒たちもなにごとかと上を見上げる。

 タタン、と軽快けいかいに着地した大沢木は、ポケットに手をつっこむとと、血まみれの格好で校門へと歩きだした。

 呆然としている日和は、なにが起きたのか理解するのに、始業開始のチャイムが鳴るまで待たなければならなかった。


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