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「オレとおなじヤツを捜しているヤツがいる」
屋上にあがるなり、開口一番、大沢木は日和に告げた。
「おまえだろ。ひーちゃん」
「ああ」
日和はうなずいた。
シケモクを取りだした大沢木は、ライターでなく小箱からマッチを取りだすと、それで火をつけた。
「よけいなことすンな」
「なんでだよ」
日和はするどい目をした友人につめよった。
「そいつを捜してるんだろ? 協力させてくれよ」
「迷惑だ」
端的に、だがはっきり断言し、大沢木は日和を否定する。
「これはオレの問題だ。おまえみたいなフツーのコウコウセイが出る幕じゃねえよ」
「オレは、いっちゃんを助けたいんだ!」
「何度も言わせるな」
一度もこちらを向かない友人に、日和は我慢しきれず肩をつかむ。
「こっち向いてくれよ! なんで手伝わせてくれねえんだよ!」
「そいつはな、俺のカタキだ」
肩をつかまれても微動だにせず、大沢木は遠くを見つめる。
「……俺のダチを殺した野郎だ」
「殺したって、ハハ、まさか、冗談だよね?」
「おまえにウソつかねえよ」
すー…と、大沢木との距離が離れていく。目の前にある背中が、手を伸ばしてもとどかない距離にあるような気がした。
つかんだ手をゆっくりと外し、大沢木はふりかえる。
なんで、そんな目でオレを見るんだよ、と春日は思った。
「南の中学に行ってから、荒れてよ。ほら、俺って片親しかいねえだろ? 馬鹿にするヤツをタコ殴りにしたら、そこから真っ逆さまでよ。ついには、磯中の番まで張ってた。あんまり頭イイガッコウじゃなかったんで、サボって遊びも覚えた」
金網に背を持たせ、話をする彼の目は、どこか空虚だった。
「そこで気の合うダチが出来た。同級の戸隠っつーワルでよ。いつもツルんで馬鹿ばっかりやってた。おまえみたいにさ。楽しいヤツだったよ。一番の親友だった。これから先も、ずっとこのクサレ縁はつづくんじゃねーかと、本気で思ってた」
青空を見上げる。
「そいつがよ、殺されちまった。拳銃持ったガキに、目の前で。生身でどれだけ強かろーが、銃なんぞ持ちだされちゃ、かなわねえよな。翌日新聞でデカデカと載ったよ。”磯垣生、射殺される。暴力団の抗争に巻きこまれたか?”ハハッ、笑っちまった。くだらねー世の中だと思った」
「け、警察には」
「言ったさ。だが、不良のタワゴトなんぞ、公僕連中は耳すらかさねえ。ほかに仕事があるんだ、とっとと帰れ、ってな。ああ、そういや大人はこんなんだったって、わかりきってたはずなのに。どいつもこいつも自分勝手で、俺たちみたいなつまはじきモンに冷たい目ェ向ける。なぁ、日和」
「な、なんで、俺に振るんだよ」
「くく……ま、そういうこった。分かったろ。偽善なんぞで手を貸すと、おまえだって死ぬかもしれねえ。おとなしく家に帰って――俺とのつきあいなんか、キレイさっぱり忘れちまえ。それが、おまえのためだ」
それで終わりだと、大沢木は金網から背を離し、一人で出口へ向かう。
「あ……」
声をかけることをためらった日和は、扉が閉まるまで、なにも言えずに固まっていた。




