ポッキーゲーム
「彼方君、ポッキーゲーム、しませんか?」
こんにちは、氷崎雫です。
現在私の右手には赤い箱。ポッキーの箱が握られています。
普段彼方君にドキドキさせられっぱなしの私ですから、たまにはこちらから攻めてみようかと思いまして学校帰りにポッキーを買ってきたのでした。
「ポッキーゲーム?」
おうむ返しに呟いてたっぷり10秒程時が過ぎました。
うう、なんだかこれ、私の方が恥ずかしい……?
「ああ」
合点が行ったというような表情で彼方君が頷きます。
さぁ、これから私の反撃です!頑張って彼方君をドキドキさせ——
ちう
「!?」
彼方君の手が私の方に伸びて来たと思ったら、そのまま顔を掴まれまして。そのう、キス、されました。
「ななななな何するんですかぁっ!」
「何って……キスがしたかったんだろう?雫は恥ずかしがりだから素直にねだれないのかと思って。一々ポッキーを介さなくてもねだればすぐしてやるぞ?」
違います!何かが根本的に違います!
私は、たまにはこういうことをやって、でも全然余裕なんですからねって見せつけたくて。
そりゃあキス、もしたいと思わなかったかというと嘘になりますけれど。
あああ、ぐちゃぐちゃして何が何だか分かりません!
私が心の中でそう葛藤していると「そんなにポッキー食べたかったのか?」などと彼方君が首を傾げます。
もうっ!この人は!
私は大きく深呼吸すると彼方君の腕を引っ張って軽いキスを一つ。
「え?」
「いっ、いつまでも私ばっかりがドキドキしてると思ったら大間違いなんですからねぇぇぇえええっ!」
そう言い残して私は自室へと逃げ込みました。
ああ、私が彼方君をドキドキさせられるのはいつになるんでしょうか。