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3

 翌朝、セミの大合唱で意識が覚醒する。


 こっちのセミは東京より大きくて頑丈に違いない。


 窓を開けて寝てしまっていたので、余計に大きく聞こえているのだろうけど……


 それにしても暑い。


 ここ最近猛暑日ばっかりの夏でも、この辺りは標高が高いので涼しいだろうと思ったのに……


 なんて、うつらうつらと目を薄く開いた時、視界が茶色かった。


 茶色……?


 しかも、なんだか熱い。



 ……熱い!?



 驚いて飛び起きようとした。


 けど、体が動かない!


 意識あるのに金縛り?!


 夏の風物詩?


 いや、今は朝でこんなに明るいのにユーレイとかそんなっ!



 手をバタバタを動かそうとしたら、腕を掴まれて……



「賑やかなお目覚めだなぁ。おはよう」



 優斗がいた!


 人間って、驚きすぎると声が出ないのかな?


 そして口のネジが外れてしまったのか、ポカンと開いたまま自力で閉じられない。


 何故ここに優斗がいる?


 一緒に寝ていたの?


 このベッドに?



 ……イビキとかかいてないよね?


 歯ぎしりしてなかったかな?


 変な寝言言ってないよね?


 いや!


 そんな事より、もっと大事なことがあるはずだ。


 なんだ?


 なんだっけ?


 暑かったから汗臭くなかったかな?


 って違う!


 そんな事じゃない! いや、それも大事だけど、今考えなければいけない事は……



 そうだ!



 部屋、鍵掛けていたはずだ!


 それなのにどうしてここに優斗がいる?


 寝ぼけて開けちゃった?


 一緒に寝ようなんて言っちゃった?


 そ、そんな不埒な言葉……



「……颯太? おい。大丈夫か? どうした?」



 優斗は僕の腕を開放して顔を覗きこんできた。



「ど……ど、う……どう……」



 ああ!


 焦ってて口が回らない!



「…………どうしてここにいるかって?」



 勘のいい優斗は僕の言葉を理解したようだ。


 僕はこくんと頷いた。



「昨日の夜帰ろうとしたけど、俺、ここの鍵持ってなかったんだよ。で、お前に戸締りしてもらおうって思ってドアノックしたけど出てこないしさぁ……」



 優斗はそう言いながらベッドから下りて窓の前に立った。



「まあ、眠ってるんだろうなとは思ったけど、ちょっと心配になったから外から梯子を掛けて上ったんだ。案の定お前寝てたから……まあ……用心棒的な? 感じで?」



 的な? 感じで? って、語尾を上げるな!



「一旦家に戻ろうかとも思ったんだけど、その間に何かあっても怖いしさ」



 ヘラっと笑う優斗。


 何だかその笑いがカチンときて、少し頬を膨らませた。



「別に……何かあったらって、そんな心配してもらわなくても……僕だって男だし……」


「ぐーぐー寝てたくせに何言ってんだ? 最近はこのあたりも物騒になったんだぞ? 呑気にイビキかいてたしな」


「え? イビキ!?」



 うわ!


 イビキかいてたなんて一生の不覚!


 最悪!


 どうしよう!


 恥ずかしいのと焦りが頭の中をぐるぐると回る。



「嘘だよ」



 え?


 嘘?



 驚いて顔をあげた僕に優斗が笑った。



「気持ちよさそうな寝顔だったからつい俺も眠くなっちゃってさ。イビキなんてかいてないよ。安心しろ」


「ゆ、優斗兄ちゃんはいつもそうやって僕をからかうんだから!」



 あ、やばい。


 思わず『優斗兄ちゃん』なんて言ってしまった……


 子供みたいな言い方しちゃった……



 頬が熱くなるのが分かって、赤面した顔を見られたくなくて俯いた僕の髪を、優斗は優しく撫でてくれた。



「腹減っただろ?」



 その問いに、素直に頷く。



「朝飯の準備するから顔洗ってこい」 



 頭をポンポンと軽く叩いて、優斗は部屋を出ていった。



 まさか一緒に寝ていたなんて……!


 寝顔とか見られた?


 寝言言ってないよね?


 気になる!


 でも、寝言言ってたどうか聞けないし……!



 ぐわああぁぁあっっと、心の中で叫びながら枕にぼふっと顔をうずめた。



 あ、優斗がつけているコロンの香りがする。



 この匂いは変わらないんだ……



 ドキドキする。


 どうしよう……


 バレないようにしなきゃ……


 火照り出した頬をぺちっと叩き、優斗が触れた髪の毛をそっと撫でた。

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