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優斗の、僕を見つめる視線がなんだか熱いのは気のせい?
「どうして3年前、僕が振ったって思ったの? 僕はなにも言ってないよ?」
この雰囲気が恥ずかしくて、話題を変えて訊いてみた。
「3年前、お前が東京に帰る日の前日に告白しようと思ったんだ。でも、まだお前は中学生だったし、すごく悩んだ。そんなことしていいのかって」
優斗は僕の目から視線をそらさずに話す。
「もしかして颯太も俺の事好きなのかなって思ってたから、俺が年上なんだからきちんと伝えなきゃって思って別荘に行ったら……会ってくれなかっただろ?」
だって……その時にはもう、優斗に振られているって思ってたから……会いたくなかったんだ。
「まあ、今考えてみれば、その時は俺に振られたって思っていただろうから会いたくないと思うのも無理ないよな。でも、あの頃の俺は自分に全然自信なくてさ。きっと颯太は俺の事なんて全然眼中になくて、むしろ迷惑って思われてたりして……って色々考えて……」
「そんな……」
もう少し早く告白してくれれば、手紙の事で僕が誤解する事無かったのに。
でも、……僕だって、きちんと自分の口で想いを伝えていたらよかったんだ。
「好きな奴の行動とか言葉は、自信が無いと悪い方悪い方に考えてしまうんだ。だから、俺はお前に嫌われたと思った。もしかして、昼寝してたお前にキスしてたのがバレたのかなって……」
キス!?
なんじゃそれは!
「何それ! キスしたの?」
「……我慢できなくて、つい……、隙を狙って……色々……」
色々?
変態!
何をしたんだ!
驚いて、あんぐりと口を開けている僕に、優斗は苦笑いしながらも、でも、物凄く照れた表情で笑った。
「俺、超間抜けなバツイチだけど……、お前を好きでいていいか? 傍にいてもいいか?」
「…………もう、酔っ払って婚姻届に名前書いたりしない?」
「お前との婚姻届なら喜んでサインするけど、それ以外の奴となんて絶対にそんなことしない」
「絶対に?」
「絶対だ。約束する」
優斗は僕の頬にキスをしてくれた。
緒方さんが手紙を隠していたのを責める気持ちなんてなかった。
2人の気持ちが同じだったという喜びの方が大きいから。
「颯太は、俺の事好き? ……好きだよな? 畑で言ってくれたのは、告白だろ?」
僕は素直に頷いた。
「……大好き」
「もう一回言って」
「大好き」
「もう一回」
「大好き」
「もう一回」
「好きだってば」
「もう一回」
「何度言わせるの?」
「もう一回」
もう! 壊れたラジオみたいにもう一回もう一回って……!
「……大好きだよ。優斗。一番好き。誰よりも大好き」
ちょっとはにかんで笑いながら言ってみたら、優斗の顔が見る見るうちに真っ赤になった。
「お前……それ、反則だ」
「え? っあ!」
突然景色がぐるりと回った。……と思ったら、優斗の腕の中にいた!
優斗は立ちあがった。
でもここは荷台なので、物凄く高い場所にいるみたいで怖い!
「やだ! 下ろしてよ」
「暴れるな。落ちるぞ」
優斗は笑いながら僕を抱えたまま荷台から飛び降りた。
「ひゃあっ」
思わずしがみついた僕を優斗はギュッと抱きしめて公園の中のブランコに座った。
「3年前の俺だったら、今のお前を軽々と抱く事出来なかったかも」
「うん。あのひょろひょろ優斗じゃ無理だったかも」
僕の言葉に優斗は笑い、僕の唇にキスをした。
突然のファーストキス!
優斗は寝ている僕にキスをしていたみたいだけど、僕はそんなの知らなかったから、今のが僕のファーストキスだった!
「どうしてそんなにさりげなく簡単にするの!?」
バカ!
ファーストキスっていうのは、お互いに見つめあって……って、ああああ!
顔が熱い!
湯気が出る!
「あ、……気分的にはファーストキス……?」
優斗は、しまった! という顔で僕を見た。
僕は頬を膨らませて頷いた。
優斗は謝って、そして、
「好きだよ」
唇にキスをしてくる。
僕は目を閉じ、唇に触れる優斗の温もりを感じた。
3年前の事
3年間の事。
それぞれの想いはようやく今重なって、こうやって互いの鼓動を感じられる。
今考えればそれはちょっとした掛け違いで物凄く遠回りしたような気がするけど、それはそれで、きっと必要なことだったのかもしれない。
トマト……
久々に食べてみよう。
優斗が嫌いって言っていたから、自分も嫌いになれば優斗に近付ける様な気がして嫌いだと思うようになった。
でも、本当はトマト大好きなんだ。
優斗もトマト食べられるようになったから、もう遠慮しないで思いっきり食べられる!
それに、優斗が作るトマトなら、愛情たっぷりで絶対に美味しいはず。
トマトを嫌いになった理由を優斗に話すと、優斗の顔が真っ赤になった。
そしてまたぎゅうううっと強く抱きしめられた。
誰もいない公園で満天の星空の下。
勘違いからとんでもない方向に行ったけど、終わりよければ全てよし。
手を繋いで一緒に見る星空が本当に綺麗で、きっとそれは自分たちを祝福してくれていると思った。
ずっと、想ってくれてありがとう。
これからも宜しくね。って言ったら、優斗がもっと真っ赤な顔になって頷いた。
大嫌いって言っていたのは大好きだから。
もう、自分を騙さなくていい。
「大好き」
僕は自分から、優斗の唇にキスをした。
【完】




