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1.草原と馬車
見渡す限りの草原を、一台の馬車が走っている。貴族が乗るような、白を貴重とし、座席部分は個室ではなくオープンタイプである。引いているのは白馬で、とても草原には似つかわしくない馬車だ。
「ねぇ、いつになったら着くの?」
キャリッジで脚を組んでいる少女が言った。年のころは14、5歳。髪は淡いブロンドで、瞳は緑柱石の原石のように、淡く深く澄んでいる。服は白のドレスで、馬車とよく調和していた。
「もうちょっとだって言ってんだろ」
御車台の男が答えた。こちらは20歳前後、肩まで伸びた黒髪だ。少女とはうってかわって貧相な冒険者の身なりをしており、もしこの光景を旅人が見たら、どこぞのお嬢様とその従者だと思うだろう。事実は違っていた。
二人は、とある王国の姫と、その略奪者なのだ。
「ほら、もう見えてきたぞ」
遠くに城壁で囲まれた大きな町が見えた。
この二人…略奪者デュオと王国の姫アリスの出会いは、数日前に遡る。